株式会社ファイブスターズ アカデミー
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準備万端な態勢で臨んだのに、当日の異様な雰囲気に飲まれてしまい、緊張して「あがる」ことがあります。
この時、多くの人が間違った対処法をとっています。
それは、「大丈夫!大丈夫!」とか、「落ち着け!落ち着け!」と心に念じることです。
いくら念じたところで、それでパニックが治まった試しはありません。
この対処法は「回避的コントロール」と言って、有効なのはあくまで予防的段階までです。
つまり、「なんだかパニクりそうだな」と感じた時点なら有効ということです。
でも、一度パニックが始まってしまうと、もうダメです。
人は、シロクマを忘れようとするとすればするほど、シロクマを思い出してしまうのでしたよね。
だから、落ち着こうと自分に言い聞かせればするほど、緊張している自分の姿が浮かび上がってきてしまうのです。
では、どうしたらいいのでしょう。
自身も長年パニック発作に悩まされてきた植木は、この対処法についても教えてくれています。
それは「諦めてその苦しみに身を委ねる」ことだそうです。
なんだか無責任なようにも聞こえますが、具体的には自分の様子を「ひとり実況中継する」ことだと言います。
例えば、手が冷たくなってきたと思ったら、「今、手が冷たくなってきました」と小さく呟いてみるのです。
状況を改善しようとするのではなく、状況を客観的に見つめて、まずはそのまま受け入れてみるのです。
この話を聞いた時、私は森田正馬の「森田療法」のことを思い出しました。
森田は「あるがまま」が大事だと言います。
「こんな自分ではダメだ」、「こうならなくちゃいけない」と思うから人は悩み苦しむのです。
そうではなく、「あるがまま」でいいのです。
悩みや不安を解消しようとするのではなく、悩みや不安に囚われている自分を、ありのままにまずは認めて受け入れて、その上で今やるべきことをやりなさいと教えます。
私たちは緊張してあがってしまうと、「これはいつもの私ではない」、「早く本来の自分に戻らなくちゃ」と思ってしまいます。
でも森田の考えでは、平常心の「私」も、あがってパニクっている「私」も、同じ「私」なのです。
あがっている「私」を否定することは、自分自身を否定することに他なりません。
だから、まずはあがっている「私」を、あるがままに受け入れてみることです。
そのためには、自分の様子を冷静に観察しなさいと森田も言います。
実は、私もこの方法で平常心を取り戻した経験があります。
サラリーマン時代に、役員が列席するレセプションの司会を勤めたことがありますが、こんな私でもお歴々の前で失敗しちゃいけないというプレッシャーから、柄にもなくあがってしまいました。
すぐに森田療法のことを思い出し、自分の体の様子を客観的に観察することにしました。
最初に気づいたのは、心臓の鼓動が速くなっていることでした。
「ああ、オレはあがると脈が速くなるのだな」
そう心の中で呟きます。
次に、膝が少しガクガクしているのがわかりました。
「へー、オレって緊張すると膝が震えるんだ」と思ったその瞬間でした。
不思議なことに、膝の震えがピタリと収まったのです。
気がつくと、完全に平常心に戻っている私がそこにいました。
あがってパニクっている「私」も「私」です。
否定してはいけません。
「社会」という複雑な人間関係の中で生きている私たちは、どうしても「人から評価されたい」とか、「人からよく思われたい」という心理に囚われがちです。
それは仕方のないこと。
否定しても始まりません。
心の中にそんなシロクマがいることは素直に認めましょう。
問題は、そのシロクマがあまりに大きくなりすぎて、あなたを苦しめているのではないかということです。
あなたの心の中のシロクマを完全に追い出すことはできません。
でも、シロクマのことは一旦横に置いておき、「あるがまま」の自分を受け入れた上で、今なすべきことを淡々とやることはできます。
そうすることで、シロクマ君をちょっとばかりサイズダウンすることはできますよ。
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