株式会社ファイブスターズ アカデミー
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「鮮度保持剤」の開発のためにマグロ漁船に乗船した齊藤は、漁師のコミュニケーションの取り方についても、自分の職場との違いを思い知らされます。
中でも印象的だったのが、漁師の「叱り方」でした。
マグロ漁の延縄には、時々サメが掛かります。
サメは非常に獰猛なので、すぐにナタで頭を半分くらい落とさなければなりません。
なぜ全部落とさないかというと、胴体と切り離された頭だけでも噛みつくほど生命力があるので、頭が甲板上をゴロゴロ転がる方が危ないからです。
ある日、水揚げ作業中に「おわぁ!」という大きな叫び声が上がりました。
声の方向に目をやると、マグロの内臓を捌く作業に当たっていた若い漁師が、ヨシキリザメに右足を噛まれているではありませんか。
甲板上に並ベられたマグロの中に、サメが一匹混じっていたことに気づかずに、うっかり近づいてしまったようです。
ヨシキリザメは所謂「人食いザメ」の一種。
最悪の場合、右足を失うことにもなりかねません。
ところが、漁師が慌てて足を振り上げると、サメは足から外れてしまいました。
幸運なことに長靴が噛まれただけで、足の方は間一髪のところで難を逃れていたのです。
仲間の漁師たちが口々に「すげぇ」とか「神業じゃ」と声をあげたその時、操舵室から船長の「ゴルァ!」という怒声が響き渡ります。
瞬時に全員が凍りつきました。
もし、あなたの職場で、若手が不注意から重大なミスを犯したら、どんな風に怒られますか?
「バカヤロウ!」ですか?
「やる気あるのか!」ですか?
それとも「何年この仕事やってるんだ!」ですか?
その時、船長はこう叱りました。
「一体、何やっとんじゃ」
ほら、やっぱりどこも同じですよね。
ところが、この後がちょっと違うのです。
「せっかくうまく捌けるようになったお前がここでケガしよったら、みんなが困りようが!こんバカ!」
この叱り方が非常に優れているのは、3つのことを含んでいるからだと齊藤は分析します。
①お前は捌くのがうまい
②お前が欠けると戦力が劣ってしまう
③お前はこの船でとても役立つ人間だ
どうやら、同じ「叱る」でもモチベーションを上げる叱り方があるようです。
その証拠に叱られた当人は、叱られたことがとても嬉しかったと後に振り返ります。
単にミスを叱るだけだと、部下の方は「自分は組織に必要のない存在なのか」と思ってしまいます。
確かに、部下がミスをしたことによって、組織にはマイナスの影響があったかもしれません。
でも、もしその部下がいなくなってしまったとしたらどうでしょう。
組織にとって、もっと困った事態になりませんか。
ミスをした部下も、組織の中では重要なパーツを担っている戦力であり、チームに貢献しているメンバーのひとりです。
まずはそのことをキチンと認めてあげましょう。
その上で、同じミスを繰り返さないよう自覚させればいいだけです。
マグロ船では1カ月余りの航海が終わるまでの間、乗組員は同じ船で過ごします。
途中でメンバーを替えることはできません。
もし、誰かひとりがやる気を失くしてしまうと、業務に支障を来すだけでなく、船の運行が危うくなることだってあり得ます。
だから、叱り方にも細心の注意を払うのです。
あなたの職場だって、ひとりひとりのメンバーが掛け替えのない存在であるという点は、マグロ漁船と同じではありませんか。
でも、「そうは言っても」と反論したくなる管理職もいるでしょう。
確かに、この叱り方が通用しない職場もあることはあります。
それは認めます。
もし、あなたの職場がそれに該当するなら、この叱り方は絶対に使わないで下さい。
その職場とは、メンバーが「日雇い」という雇用形態の職場です。
オレにはこんな叱り方はできないという人は、「日雇い」職場への転職を考えた方がいいかもしれません。
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