株式会社ファイブスターズ アカデミー
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今回は、出世レースで大きく遅れをとったけれど、最後はちゃんと社長になったサラリーマンの話です。
彼らの生き方を見ていると、ビジネスパーソンにとって最も大切なことが何なのか、なんとなく見えてくるような気がします。
実力主義の外資系のIT企業では、早ければ30歳前後で管理職になる人もいるそうですが、実力がつくまでは第一線で努力を重ねた方がいいと考えていたそのシステム・エンジニアが、管理職に登用されたのは36才の時。
あまりに「遅咲き」な昇格でした。
ある時、メガバンクに自社システムの売り込みを画策しますが、どうしても価格の折り合いがつきません。
絶対に値引きは認めないという部長を必死の思いで説得し、ようやくOKを取り付けたと思ったら今度は本部長がダメ出し。
本部長に食い下がると「役員に聞け」。
その役員を突破すると「社長に聞け」。
やっとのことで社長の了解を取り付けたら、「米国に聞いてこい」。
すぐにアメリカに飛び、何人もの役員を説き伏せた挙げ句、最後は事業部のトップと延長戦を繰り広げ、遂に承認を取り付けたのでした。
普通、偉いサンと真っ正面から対立するというのは、自分のキャリアに傷がつく可能性があるのでなかなかできないこと。
失うものが何もない遅咲きだからこそできた、まさに捨て身の行動でした。
ここが「風見鶏」と決定的に違うところです。
この遅咲きサラリーマンが、次第にファンを増やしていったのには理由があります。
どこの会社でも、昔からの理不尽な規則や習慣が必ず存在するものです。
みんなが「おかしい」と感じながらも、いつの間にか諦め流されてしまった、その会社特有の決まり事。
それを改めるために、率先して上層部と掛け合ったのです。
正論を主張して譲らないその姿を見て、部下たちはついて行こうと思うようになります。
日本法人のトップを経た後、なんと経済団体の代表幹事に推薦されました。
遅咲きの男が、エリートたちを追い抜いて会社のトップに立ち、さらには会社を超えて経済界のトップに上り詰めた瞬間でした。
すごい話だなと感心していたら、「遅咲き」どころか、「周回遅れ」が花開いたケースもありました。
石油会社は70年代に深刻な危機を迎えます。
オイルショックです。
人々がトイレットペーパーの確保に奔走する映像は、今でもテレビで見かけることがありますよね。
販売部の係長だったその男は、「こっちに石油を回せ!」という政治家の恫喝にも怯むことなく、実務の責任者として会社に泊まり込んで陣頭指揮を取っていました。
3時間の仮眠で奮闘する日々。
彼を支えていたのは、日本国家のためにエネルギーを安定供給しなければ、という使命感だけでした。
ある日、体調の異変を感じて病院に行くと、急性肝炎と診断され即入院。
医者が言うには過労死寸前だったそうです。
あまりの激務に、寝酒として始めたウィスキーがかなりの量になっていました。
病院のベッドで天井の穴を数えながら、「会社のために身を粉にして働いてきたのに・・・」と悔しさがこみ上げます。
病床で、同期の活躍ぶりを聞く度に焦りは募り、「俺はもう終わりだ」と何度も呟きました。
丸1年を棒に振って職場に復帰した時には、出世への執着心はすっかりなくなり、「無為自然」が座右の銘になっていました。
44歳でようやく課長に昇格しますが、これは同期のしんがり。
正真正銘の「周回遅れ」です。
この新米課長を支えたのも、やはり使命感でした。
時代は市場解放の真っ只中。
石油製品の輸入自由化が認可されれば、海外の列強メジャーを前にして、日本の石油会社などひとたまりもありません。
通産省との丁々発止のやり取りでも、一歩も引かずに突っ張り通し、最後は10年間の猶予を勝ち取ったのでした。
自らの出世を顧みず、己の信念を貫き通した彼らに共通しているのは、理想の実現に向けての熱い情熱でした。
果たして私たちは、出世と差し違えるだけの理想を抱いているでしょうか。
日本企業の人事考課は「減点主義」が主流です。
当然、最も卒なく振る舞って、ミスを最小限に抑えた者が出世レースのトップを疾走することになります。
しかし、そのエリートたちはどんな理想を抱いているのでしょうか。
もしかしたら、彼らにとっての目指すゴールとは、「社長になること」ではないでしょうか。
でも、自分の出世を究極の目標にし、それを達成して満足感に浸っている彼らに、会社の将来を託してしまってよいものでしょうか。
出世も大事ですが、そもそも出世とはそれ自体が目標とされるようなものではなく、理想の実現に向け懸命に取り組んだ結果に対する、評価のうちのワン・ノブ・ゼムなのではないでしょうか。
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