株式会社ファイブスターズ アカデミー
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最近、頻繁に児童虐待のニュースを目にするようになりました。
中には、子どもを死に至らしめてしまったケースもあり、本当に胸が痛みます。
しかも過失というよりは、死ぬかも知れないと分かった上での、所謂「未必の故意」に近い事案もあるようです。
世間では「自分の子どもに愛情を注がないのは動物以下」という感情論が炸裂しているようですが、果たしてそうでしょうか。
ワニの赤ちゃんは卵から孵ると、一目散に母親から逃げ出します。
ワニの母親は、小さくて動くものは全て「エサ」と認識して食べてしまうからです。
「愛情」という感情が生じるのは、哺乳類からであると長い間言われてきました。
ところが1962年に、当時京大の大学院生だった杉山幸丸によって、衝撃的な事実が明らかにされます。
オナガザルの仲間であるハヌマンラングーンが、「子殺し」をしていたのです。
一般にサルの集団というのは、一匹のオスのボスザルが多数のメスザルを率いていますが、時々下克上が勃発してボスザルが交代します。
この時、集団を乗っ取った新たなボスザルが、メスザルたちと交尾しようとしてもうまくいきません。
なぜなら、育児中のメスザルは発情しないからです。
そこで、新たなボスザルによる「子殺し」が行われるのです。
残酷な話に聞こえますが、動物にとって究極の目的は自分の遺伝子を残すこと。
メスザルにとっても、もし産まれてくる子どもが弱かったら、自分の遺伝子が途絶えてしまうかもしれません。
そのため、より強い遺伝子を持った新たなボスザルと結ばれた方が、強い子孫を残す上では有利だという計算が働きます。
だからメスザルは、子どもを殺された悲しみに打ちひしがれる暇もなく、すぐに発情するのです。
今では30種ほどの霊長類で、この「子殺し」という現象が見つかっています。
ちなみに、日本に住んでいる霊長類はニホンザルだけですが、極端な飢餓状態に陥るなどの特殊なケースでない限り、「子殺し」の事実は確認されていません。
誤解のないように断っておきますが、私は決して「子殺し」を弁護しているのではなく、あくまで学術的に検証された事実を述べているだけです。
竹内久美子の『本当は怖い動物の子育て』には、自分の遺伝子を残すための、動物たちの熾烈な戦略が詳しく紹介されています。
強い遺伝子を残すための「子育て」戦略とは、取りも直さず弱い遺伝子を残さないための「子殺し」戦略でもあるのです。
では、ヒトはどうでしょう。
ヒトは、「子殺し」を防ぐための、実に優れたメカニズムを開発しました。
それは、育児中でも発情できるというシステムです。
しかも、乳飲み子を抱えている間は妊娠しにくいという、安全装置も兼ね備えています。
なんとも素晴らしい進化ではありませんか。
ところが竹内のこの書には、世界各地の先住民の間で、今なお「嬰児殺し」が行われていることも紹介されています。
マクマスター大学のマーティン・デイリーとマーゴ・ウィルソンの研究です。
南米のボリビアとパラグアイの国境付近に住むアヨレオ族は、狩猟採集生活と焼畑農業を営む先住民ですが、女性は正式に結婚するまでの間、何人もの男性と付き合ったり同棲したりします。
その過程でできた子どもを、信じられないくらいの高い確率で殺していることがわかりました。
ある女性は17歳から22歳の間に6人の男性と同棲し、生まれてきた3人の子どもを殺しますが、24歳の時に正式に結婚すると、その後産んだ4人の子どもはちゃんと育てました。
また、別の女性は6人の子どもを殺した後、4人の子どもに恵まれ、これもちゃんと育てていました。
育てるか否かの最終的な判断は、当の女性に委ねられているのですが、どういう場合に子どもを殺してしまうのかというと、父親から確実なサポートが得られそうもないときでした。
つまり、育児や経済的な負担という問題が影響しているようです。
アヨレオ族に関する調査だけでも衝撃的ですが、デイリーとウィルソンはもっと多くの先住民の社会についても調査しています。
アメリカの「人間関係地域ファイル」(HRAF)という機関がまとめた、文明化していない60の社会についての情報を詳しく分析したところ、39の社会で「子殺し」の事実が認められ、うち35の社会でその具体的状況に関する記述がありました。
結構多いですよね。
また、2009年にNHKが、ブラジルとベネズエラの国境付近に住む、ヤノマミ族の生活に密着したドキュメンタリー番組を放映しましたが、衝撃的だったのが14歳の少女の出産の話です。
出産は森の中で、女性だけが立ち会って行われるのですが、生まれた赤ちゃんを母親が抱き上げた時のみ、「人間」として認められます。
抱き上げなかった時は、「精霊」として天に返すきまりなのだそうです。
この基準はアヨレオ族とほぼ同じで、しかも当の女性が決定権を握っている点も同じです。
この少女は最後まで抱き上げなかったため、「精霊」はシロアリの巣に埋め込まれ、3週間ほどでほぼ食べ尽くされた後、巣には火が放たれました。
文明化されていないから、残酷な習慣が残っているのだろうと考えるのは間違いです。
なぜなら、現代においても「堕胎」が行われているではありませんか。
もしヤノマミ族やアヨレオ族が、出産する前に「精霊」になる方法を知っていたら、そちらを選択していたのではないでしょうか。
ただ、現代社会では性教育等の様々な取り組みのおかげで、このような悲劇が減少していると思われる点がせめてもの救いです。
話を児童虐待に戻しましょう。
日本では戦前の1933年に「児童虐待防止法」が成立していますが、この頃問題視されていたのは身売りや欠食でした。
中には子どもに危険な曲芸をさせたり、見世物にする親までいたそうです。
つまり、この時代の児童虐待は、主に経済的に貧しいことが引き金となって起きていたわけです。
現代のそれと様相が異なるのは、それだけ私たちの生活が豊かになった証とも言えます。
このように、経済成長は児童虐待を減少させることに大きく寄与したわけですが、いまだ根絶するまでには至っていません。
今後は、一体何が必要なのでしょうか。
感情論を振りかざす前に、有効な社会システムとは何かについて、真摯に議論する姿勢を持ちたいものです。
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