株式会社ファイブスターズ アカデミー
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今回も、アメリカ海軍史上歴代No.1と賞賛されたミサイル駆逐艦ベンフォルドの艦長、マイケル・アブラショフのエピソードです。
ある時、ベンフォルドは潜水艦の追跡訓練という合同演習に参加するのですが、乗組員たちは第二次世界大戦からずっと続いている伝統的なやり方にはもう飽き飽きしていました。
というのは、その手垢にまみれた使い古されたやり方で、すでに2回も演習をこなしていたからです。
そこでマイケルは、新しいやり方にチャレンジしようと考えます。
まず、上官から訓練を主導する許可をとりつけます。
次に、武器担当のジョン・ウェイドにこうもちかけました。
「みんながあっと驚く、新しい訓練案を考えようじゃないか」
ただし、ジョンがひとりで考えるのではなく、下士官を始めレーダーのオペレーター、技術者、砲手たちみんなでアイデアを出し合ってほしいということも併せて伝えます。
ジョンを中心とした20人ほどのチームは、こんなチャンスはめったにないと大いに盛り上がります。
何度もミーティングを重ね、ついに今まで誰も考えつかなかった独創的な戦術を編み出したのでした。
「天下のベンフォルドここにあり!」をアピールする最高の舞台が整ったわけです。
ところが、本番になるとそう簡単に事は運びませんでした。
マイケルやジョンの予想に反して演習本番ではこの作戦は全くうまくいかず、結果的に潜水艦を取り逃がしてしまうという大失態を演じてしまいます。
艦長からチャンスをもらったのに、それに応えることができなかったウェイドはひどく落ち込みました。
と同時に、その時のマイケルの行動に驚かされます。
なんと、作戦が失敗したにもかかわらず、このノーテンキな艦長は笑顔で部下たちの背中を叩いているではありませんか。
「一体どういうつもりだ?」
ジョンには、マイケルの行動が全く理解できません。
ジョンが艦長の真意を知ったのは、訓練終了後に全艦参加で行われた公開討論会の場でした。
世紀の大失態を演じたはずの艦長マイケル・アブラショフは、胸を張って堂々とこう言い放ったのです。
「潜水艦の追跡には失敗したが、艦長に就任以来もっとも誇らしい瞬間だった」
失敗したのに誇らしかったとは、一体どういうことでしょう?
マイケルは続けます。
「なぜなら、乗組員たちは自分たちで戦術を考え出し、機能した部分と機能しなかった部分を学ぶことによって、その能力を伸ばしたのだから」
部下の案を採用するのは、上司にとって非常に勇気がいることです。
しかし、それよりもっと重要なのは、その案がうまく行かなかった時に決して部下を責めないことです。
「それが部下の心をつかみ、次こそうまくやろうという前向きな心を育てることだ」と、マイケルは言います。
上司というものは、今ここでの成功に囚われてはいけません。
成功体験というものは、うまく機能した部分は教えてくれますが、機能しなかった部分については教えてくれません。
「次こそ!」という不屈の心を育ててはくれません。
そういう意味では、今ここでの失敗というのは、成功に勝る貴重な経験とも言えるのです。
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