株式会社ファイブスターズ アカデミー
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トリンプ・インターナショナル・ジャパンで、従業員に一切残業させることなく、19年連続増収増益という輝かしい記録を打ち立てた吉越浩一郎のことを、私はてっきりモーレツ・ビジネスマンだと思っていました。
18年8月のブログ『叱れない管理職(2)』で紹介しましたが、彼のビジネス書には「『いい人』は無能な上司の代名詞」といった厳しい言葉が並びます。
これだけ聞いたら、まさに「仕事の鬼」。
ところがその吉越が、現役をリタイアした後に『ほんとうは仕事よりも大切なこと』を著します。
そこで、典型的な仕事人間のはずの彼が、こう断言したのです。
「仕事はゲームである」
ここで、誤解のないように「ゲーム」の意味を詳しく説明しますね。
仕事はゲームだからこそ、勝たなければいけません。
そのためには、必死で取り組まなければいけません。
なのになぜ、あえて遊びの要素も含まれている「ゲーム」という言葉を使うのかというと、仕事の場は一種の「仮想空間」だと考えているからです。
私たちは様々なビジネス・シーンで、それぞれのシーンに応じた役割モデルを演じているのです。
本当は優しい心の持ち主であったとしても、改革を断行しなければならない場面ならば、反乱分子の恨みを買ってでも断固突っ張らなければなりません。
つまり、私たちはゲームに勝つために、その場面場面で求められるキャラクターを演じているに過ぎないのです。
逆の言い方をすると、ゲームだからこそ本来のキャラクターで対応する必要はない、いや対応してはいけないとも言えます。
吉越が、「『いい人』は無能な上司の代名詞」と言う意味は、そういうことなのです。
上司にとってもっとも大切なことは、部下から好かれることではありません。
信頼されることです。
信頼されるためには、「部下に結果を出させる」ことが一番です。
だから、「部下に結果を出させる」ためには、時として厳しいキャラクターを演じる事も必要なのです。
仕事はゲームだ。
これが、吉越がビジネス・シーンを「バーチャルな場」と呼ぶ所以です。
でも、仕事が「バーチャルな場」であるならば、「リアルな場」とは何を言うのでしょう。
それは私生活そのものです。
例えば夫婦関係です。
家庭は、キャラクターとして演じる場ではなく、良くも悪くも「素」をさらけ出さなければならない場です。
この時さらけ出す「素」こそが、あなたの「素の人柄」、「本来の人格」です。
そしてそれは、学生時代、ビジネス・パーソン時代、そしてリタイア後の期間も含めた全人生を貫く、言わば「人間性の御柱(おんばしら)」のようなものだと吉越は言います。
でも、現実はどうでしょう。
バーチャルな戦場で演じているだけのはずのビジネス・キャラクターが、いつの間にかあなたを乗っ取ってはいませんか?
家庭でも、そのキャラクターが時々出現してしまうようなことはありませんか?
私たちは「ワーク・ライフ・バランス」という言葉を、ビジネスとプライベートの時間のバランスだと捉えがちですが、もしかしたらキャラクターのバランスのことを指しているのかもしれません。
吉越が、ある大手企業の社長を務めた人と、夫婦同士で会食した時のことです。
高度成長期、会社のために朝早くから夜遅くまで働き、休日は家庭も顧みず接待ゴルフに明け暮れた典型的な企業戦士のこのトップは、ワインの酔いも手伝って奥さんにこう言います。
「君は、僕の戦友だ」
彼にしてみれば、自分のビジネスマン生活をしっかり支えてくれた妻に対する感謝の気持ちと、出世のために共に闘ってくれたという仲間意識の表れだったのでしょう。
ところが、その奥さんはにべもなくこう言い放ったのです。
「あなたに戦友と呼ばれる覚えはありません」
奥さんは続く言葉を飲み込みんでしまいますが、おそらくこう言いたかったのでしょう。
「あなたが企業戦士として働いている間、私はどんな思いを味わっていたか・・・」
奥さんに対して「戦友」という言葉を使うこと自体、ビジネスとプライベートの区別がついていないことの証拠です。
家庭で過ごす時間を、戦闘ゲームのワン・シーンに含めてしまっている証拠です。
しかし、あなたのビジネス・パーソンとしての「存在理由」と「プライド」を同時に満たしてくれていたバーチャル戦闘ゲームは、職場からリタイアする日にゲーム・オーバーとなります。
後は、ただただ平和で退屈な日々が続くだけ。
ここに至り企業戦士たちは、唐突に「存在理由」と「プライド」の拠り所を失ってしまうのです。
テレビのドキュメンタリー番組で、ホームセンターに買い物に来ていた還暦過ぎの男性がインタビューに答えています。
「すべてにおいて仕事優先だった」
現役時代は刑事として、事件解決のために忙しく走り回っていたそうです。
家庭を顧みる余裕などどこにもありませんでした。
ところが、定年を迎えてこれから夫婦でゆっくり過ごそうかと思ったその矢先、奥さんは病のために帰らぬ人となってしまったとのこと。
男性は奥さんのことを思い出したのでしょう、目頭を拭いながらこうつぶやきます。
「でも、本当は仕事なんてどうでもよかったんだよね」
『ほんとうは仕事よりも大切なもの』に気づいた時は、もう手遅れだったのです。
他人事ではありませんよ。
とは言え、仕事を一生懸命頑張っている現役のビジネス・パーソンが、「仕事よりも大切なこと」に気づくのは簡単なことではありません。
でも、演じるだけだったはずのビジネス・キャラクターが、時々プライベートの世界のあなたを侵食してはいないか、あるいは「人間性の御柱」を歪めてはいないか、ちょっと振り返ってみることくらいはできますよね。
吉越のフランス人の妻ダニエルは、働きすぎの日本人に「なぜそんなに働くの?」と質問すると、決まって「家族のため」という返事が返ってくるそうです。
そこで、彼女はこんな疑問を投げかけます。
果たして毎晩遅く帰ることが家族のためになっているのでしょうか。
接する時間あってこその家族ではないでしょうか。
ちなみにフランスでは、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉はほとんど聞かないそうです。
もちろんフランスにも働きすぎの人はいるのですが、そもそもどれくらい働いてどれくらい休むのかについては、本人が主体的に決めているのです。
一方、日本の「働き方改革」はというと、やれ「残業するな!」とか、やれ「仕事の持ち帰り禁止」とか、すべて上からの御触書による改革です。
ビジネス・パーソンが、主体的に自分の働き方を決めている訳ではありません。
そういえば、ある大学教授がえらく怒っていました。
巷間言われている「働き方改革」は間違っている。
あれは「働き方改革」ではなく、「働かされ方改革」だ、と。
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