株式会社ファイブスターズ アカデミー
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『人生の実力』という、ちょっと変わった題名の本を見つけ、思わず手に取りました。
ビジネスパーソンなら、仕事ができるかどうかが「人生の実力」なのでしょうが、著者はホスピスで2500人以上の死を看取った柏木哲夫。
柏木が「人生の実力」について考えさせられたのは、67才の入院患者が亡くなった時でした。
早くに両親を失い、結婚生活で苦労し、仕事では同僚に裏切られた上に、それが原因でリストラされてしまうという、
不幸を絵に描いたようなこの男は、亡くなる2週間ほど前、回診に来た柏木に感謝の言葉を述べます。
「入院したときの痛みがすっかりとれました。
ここへ来て本当に良かったです。
ありがとうございました」
そして、独り言のように呟くのでした。
「いろいろありましたが、幸せな人生でした」
端から見れば到底そうは思えないのですが、「幸せな人生でした」と穏やかな微笑みを浮かべて死んでいく男。
その時、柏木は思います。
物事が順調に進んでいるときは、その人の「人生の実力」は見えにくい。
どのような状況に置かれても、それを幸せと思える力こそ、真の意味での「人生の実力」ではないのか。
柏木は、人生における様々な喪失を「小さな死」と考えます。
他にも、行きたい学校に行けなかった、やりたい仕事に就職できなかった、お金儲けができなかった、望んだ地位に就けなかった、などの失敗や挫折は全て「小さな喪失」であり「小さな死」です。
私たちは、人生においていくつもの「小さな死」を積み重ねていき、やがて「本当の死」を迎えるのです。
しかし稀にではありますが、行きたい学校に入り、就きたい職業に就き、儲けたいお金を儲け、望んだ地位にも就いたという、いわゆる人生の成功者もホスピスにはやってきます。
このように「小さな死」を経験したことがない人ほど、「本当の死」を受け入れることができずにひどく苦しむそうです。
どうやら「人生の実力」というのは、「人生の成功度」とは比例しないようですね。
どんなに社会的、経済的に恵まれた人生を送っている人でも、死から逃れることはできません。
柏木によれば、多くの人は今まで生きてきたように死んでいくそうです。
時折、不平不満ばかり言っている人が、突然感謝の気持ちに目覚めることもありますが、それはあくまで例外的なケース。
そんな話を聞いて、「小さな死」の苦い記憶さえ愛おしく思えてきた私は、不意に「四つ葉のクローバー」を連想しました。
研究者によると、シロツメクサの葉が4枚になるのは、遺伝的な要因によるものを除けば、人に踏まれたりして成長点が傷つけられたことが原因なのだそうです。
かつて人に踏まれた経験のある者だけが、人を幸せにできる。
今回は、なんだかとても大事な、人生の教訓を教わったような気がします。
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