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5☆s 講師ブログ

トヨタの「改善」

トヨタのグループ会社が、ビジネス書を何冊か出版しています。
様々なエピソードを紹介してくれるのはトヨタの元社員ですので、トヨタ自動車という会社がどんな姿勢で仕事に取り組んでいるのかがよくわかる本です。

例えばこんなエピソードがあります。

工場のオペレーターが作業に不慣れなため、ラインの作業効率が上がりません。
やむなく管理職が自らラインに入り、なんとか滞りなくラインを動かしていた時です。
たまたま通りかかったその上司が、こうつぶやきます。

「ラインに入るならずっと入っておけ。どうせ楽したいんだろ」

言われた管理職はムッとします。

「オレが入らなかったらラインは最悪ストップしてしまう。
そうしたら今日の生産目標は達成できなくなるじゃないか。
だからラインに入ってるんだ。
それが分からないのか!」

その気持ちは分からなくもないですが、管理職の本来の仕事は今日の生産目標を達成することでしょうか。
もしそうだとするなら、明日も明後日もラインに入らなければならなくなります。

現在、多くの企業の管理職は、「プレイング・マネージャー」にならざるを得ない状況に置かれています。

部下が思うように機能しない場合でも、それを今期の目標未達の言い訳にすることは許されません。

やむなく管理職自らが一兵卒となって部下の実務をカバーし、なんとか今期の目標を達成します。

来期も、おそらくその次の期もこの繰り返しでしょう。

このように、部下の実務をカバーする“応援要員”というのが管理職の本来の役割なのでしょうか。

そうではありませんよね。

管理職の本来の仕事は、部下を育成することです。

こちらの方がはるかに困難な仕事です。

もし部下育成がうまくいかないというのなら、育成のやり方に問題があるのか、あるいは教えようとしている仕事のやり方自体に問題があるのかのどちらかです。

それを改善するのが管理職の仕事です。

「うまくいかない」ということは、そこに「改善の余地がある」ということに他なりません。

トヨタでは「問題ない」という答えこそが大問題だと考えます。

というのは、それは取りも直さず「もう改善の余地がない」と言っていることとイコールだからです。
だからトヨタでは「改善」を最も重視し、一見仕事がうまく回っているように見えても、貪欲に何らかの問題を見つけ出そうとするのです。

面白い話があります。

一般社員が改善に貢献すると、管理職から大変ほめられるそうです。
しかし、管理職が改善に貢献しても上司からほめられることはなく、その代わりにこう言われるだけです。

「で、どうするの?」

つまり、次の改善をどうするつもりなのかと聞かれるのです。

この、終わりなき改善に向けた飽くなき努力こそトヨタのDNAなのかもしれません。

「うちはトヨタとは違う」と言い訳を言う前に、まず現状で思いつく「改善すべき点」を書き出してみませんか。

トヨタとは違うのだから、10個くらいすぐに出てくるはずです。

でも、いざそれを実行に移すとなると、社内に抵抗勢力がたくさんいますよね。

そこでもトヨタのやり方が参考になります。

まず真っ先に、その抵抗勢力の人に相談に行くのだそうです。

いきなり説得を試みるのではなく、相談という形をとってアドバイスを求めるのです。
あくまで相談ですので、相手は身構えることもなく障害となる点を思いつくままに列挙してきます。

その時、それをすべてホワイトボードに書き出します。

後はそれら一つひとつについて、一緒になって具体的な対策を考えればいいだけです。
これが相談ではなく説得だったら、こんなにうまくはいかないでしょう。

もし、抵抗勢力が部下ならば解決策はもっと単純で、管理職はこう伝えるだけでいいのです。

「ありがとう。
ではこれをできる理由に変えていこう。
君にはそのリーダーになってもらいたい」

できない理由を列挙できる部下というのは、実は現状を最も的確に把握している部下です。

抵抗勢力を敵に回してはいけません。
そもそも何も考えていない人は抵抗勢力にはなれないのですから。

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