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5☆s 講師ブログ

チンパンジーリーダー(2)

「社会的知性」を考える上で参考になる、長谷川寿一の示唆的な発言とは以下のものです。
「ソーシャル・ブレインに深く関わる『共感』と『教育』については、野生・飼育を問わずチンパンジーからの証拠はほとんどないと言ってよい」

つまり、チンパンジーには「共感」と「教育」が欠けていたために社会脳を発達させることができず、その結果ヒトのように高度な社会を作れなかったというわけです。

確かに日本のヒト社会を見ると、細部に至るまで「教育」システムが構築されています。

幼児教育、義務教育、高等教育、そして会社に入れば社員教育。
高度な教育システムを構築することにより、ヒト社会を維持・発展するための決まり事を学んだり、また人類が獲得した様々な知見が一般化されて広く知らしめられたり、後世に継承されたりしてきたわけです。

では、「共感」の方はどうでしょう。

「教育」ほどシステム化はされていませんよね。

ところで心理学者の福島宏器によると、「共感」は人間だけに見られるものではないそうです。
例えばイルカが岸に打ち上げられた仲間から離れようとせず、その結果群れ全体が死んでしまう現象などは、間違いなく「共感」と言えます。
イルカだけではありません。

アカゲザルで行ったこんな実験があります。

まず一頭のサルに「多いエサ」か、「少ないエサ」のどちらかを選ばせます。
このとき「多いエサ」を選ぶと、隣のケージにいる仲間のサルに電気ショックが与えられる仕掛けになっています。

つまり、「多いエサ」を選ぶ度に、仲間が苦しむ姿を見せられることになるのです。

もちろん「少ないエサ」の時は何も起こりません。
これをしばらく続けたところ、驚くべき結果が得られました。

実験したサルのうち2/3は「少ないエサ」の方しか取らなくなりました。

これは、仲間の痛みを自分の痛みとして感じた、すなわち「共感」したということです。

では、残りの1/3のサルはどうなったかと言うと、エサを全く取らなくなったのです。

エサを取ることができない仲間の気持ちを思いやったのでしょうか。
もしそうだとすると、恐るべき共感力と言わざるを得ません。

しかし、ここで不思議に思うのは、アカゲザルより圧倒的に進化してヒトに近いはずのチンパンジーでは、このような結果が得られないことです。

一体なぜなのでしょうか。

ここからはあくまで私の仮説でしかないのですが、チンパンジーは「論理数学的知性」を発達させる代償として、「社会的知性」に関係する「共感」の能力を退化させてしまったのではないでしょうか。

「頭はキレるが、周りがついてこない」リーダーというのは、もしかしたらこのケースではないかと思うのです。

だとしたら、まさに“チンパンジー・リーダー”。

あなたの会社にもいそうですよね。

でも、安心してください。

解決策はありますよ。

ハワード・ガードナーは、8種類の知性の中のひとつに「感情的知性」というものを上げています。

その定義は「他者の感情を読み取って、自分の感情をコントロールする能力」です。
分かりやすく言うと「相手の感情を推測し、自分の感情をそれにシンクロさせる能力」ということになります。
これこそまさに「共感」ではありませんか!

どうやら「社会的知性」と「感情的知性」は、密接に関係しているようです。

そして偉大なるヒトは、「共感を教育する」こともしてきたのです。
幼児教育や義務教育における「情操教育」がそれです。

でも、高等教育以降となると、その機会はそれほど多くないように思います。

特に、社員教育となるとほぼ皆無ですよね。

あなたの職場の雰囲気がギスギスしているなと感じたら、今一度ヒトとしての基本に立ち返って社員教育における「共感」教育というものを考えてみませんか。

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