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5☆s 講師ブログ

従業員ファースト(1)

「お客様は神様です」と言わんばかりに「顧客第一主義」を掲げる会社は多いもの。

でも、顧客ではなく従業員を第一に、顧客を第二に、そして株主を第三に位置づけている会社があります。

あの『1分間マネージャー』の著者ケン・ブランチャードと、サウスウエスト航空の名誉社長コリーン・バレットの対談を収めた『世界でいちばん従業員を愛している会社』(佐藤理恵訳)は、
メアリー・キャンベルという乗客がサウスウエスト航空のCEO宛てに送った感謝の手紙から始まります。

メアリーは父親が危篤という知らせを受けて空港に急ぎますが、あいにくどこの航空会社の便も満席。

サウスウエスト航空も例外ではありません。
すでに3人分のオーバーブッキングがある上、メアリーの前にはキャンセル待ちの客までいるという絶望的状況です。

ところがカウンターの女性は、マイクを取ると突然アナウンスを始めます。

ある乗客がキャンセル待ちをしているが、その理由は父親が危篤状態で今夜を乗り切る事ができないからだ、と状況を説明した上でこう続けます。

「スケジュールに余裕のある方は、この乗客の人生を別のものにするために、席をお譲りいただけるようご一考ください。
この便がお父様の最期に間に合う唯一の便です」

ロビーにいた乗客の多くが、アナウンスに耳を傾けます。

「サウスウエスト航空では賠償金を支払うことはできませんが、翌日の便に乗れることを保証します。
そして席をお譲りくださるお客様のご親切に心より感謝します」

数分後、何人かの客がカウンターに歩み寄ります。

こうしてメアリーは無事機上の人となり、父親の最期を看取ることができたのでした。

サウスウエスト航空では、さまざまな判断を下す権限が従業員に移譲されています。

ですので、普通は上司の判断を仰がなければならないような案件でも、担当者の判断で即決できるのです。

要するに「従業員第一」の職場というのは、従業員が会社から尊重されているおかげで、みんながイキイキ働いている職場ということです。

そして、その結果として、顧客にもよりよいサービスを提供することが可能となるのです。
従業員を大切に扱うことが顧客を大切にする心を生み出し、その結果としてもたらされる副産物こそが利益なのです。

長いイラク派遣からようやくノーフォークへ帰還した軍人の夫と一緒に、自宅のあるロングアイランドに向かうため途中から合流したデボラ・エリソンの手紙も感動的でした。

空港に到着後、客室乗務員はこの夫婦を飛行機から一番に降ろす手配をした上で、乗客も含めた搭乗者全員に対して機内アナウンスを通じてこの夫婦をねぎらうようお願いしたのです。

夫婦が通路を歩き出すと一斉に拍手が起こりました。

夫の派兵や、夫婦でともに歩んだ人生について客室乗務員が詳しく説明を始める頃には、もう夫婦は涙が止まりません。
そしてタラップを降り、地上の係員からねぎらいの言葉とともにシャンパンをプレゼントされた時、感動はピークに達したのでした。

「顧客満足」を超えて今や「顧客感動」の時代だと言われますが、サウスウエスト航空の取り組みのユニークなところは、従業員だけでなく顧客もその演出に一役買っていることです。

すなわち演出に参加した顧客もまた、自らの意思により参加することで深い感動を味わっているのです。
上っ面の「顧客第一主義」というお題目を掲げるだけでは、決して実現しない構図です。

ただし、こんな感動物語ばかりではありません。

ケン・ブラチャードは、あるときこんな機内アナウンスを聞いて大笑いします。

「誘導路を移動中はシートベルトをお締めください。
万が一立ちあがれば、弊社のバッグ破壊担当のブルーノを手荷物受取エリアに送り込みます。
その結果、あなたのバッグは残念な状態になるでしょう」

一般にこのようなユーモアは、日本では「不謹慎」と受け取られがち。

アメリカでも、すべての人がユーモアの良き理解者であるとは限りません。
顧客からこんな手紙が寄せられました。

「私は長年貴社を利用していますが、機内での安全説明の際に冗談を言うのが好きではありません」

さあ、大変。

サウスウエスト航空は一体どう対処したのでしょうか?

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