失業率は大きく下がり、完全雇用も見通せるほどになりました。
大学生の就職率も劇的に改善しました。
しかし、なぜか給料は一向に上がる気配がありません。
だからアベノミクスは失敗なのだと、野党は一斉に非難しています。
中には、国の財政状況を考えると、早期に消費税率を引き上げなければならないと主張している政治家も大勢います。
本当でしょうか?
今回は給料と税金の関係について、3回シリーズで考えてみたいと思います。
まず、その前に基本的知識として、「直接税」と「間接税」についてざっくり説明しますね。
「直接税」というのは、所得税や法人税などを言います。
その名の通り、個人の所得や企業の利益から直接徴収するものです。
まず所得税から説明しましょう。
これは、所得が高い人ほど税率が高くなります。
つまり、金持ちほど高い税金を払うことになるのです。
このような制度を、専門用語で「累進課税」と言います。
次に法人税ですが、これは基本的には儲かっている会社にしか課せられません。
ですので、赤字の会社には法人税がかかりません。
そういう意味では、「直接税」というのは所得が多いか少ないかや、会社が儲かっているかどうかなど、結構個々の事情に配慮してくれる親切な税制と言えます。
一方、「間接税」の代表選手は消費税です。
これは所得が多いか少ないかや、会社が儲かっているかどうかなどには一切関係なく一律8%かかります。
金持ちにも低所得者にも同じ税率でかかりますので、低所得者にとってはかなり不利な税制です。
逆に金持ちにとっては、相対的に優遇された税制と言えます。
1989年に初めて導入されたときは3%でしたよね。
それから5%、8%と段階的に引き上げられ、2019年10月には10%になる予定です。
消費税はどんどん増税されています。
つまり、低所得者にとっては、税負担がどんどん重くなっているのです。
では、所得税や法人税などの「直接税」も増税されているのでしょうか?
実はこちらは、税率が大幅に引き下げられています。
つまり、消費税とは反対に大幅減税されているのです。
2008年7月のブログ『日本は金持ち優遇?』で詳しく分析しましたが、1986年の所得税の最高税率は70%でした。
しかも15段階とかなりきめ細かかったのです。
つまり、その頃の大金持ちは、所得の大部分をごっそり税金に持って行かれていたのです。
ところが、その後どんどん税率は引き下げられ、1999年には37%(4段階)と、最盛期のほぼ半分になりました。
現在はちょっと揺り戻しがあって、45%(7段階)になっていますが、かつてとは比べものにならないほどの金持ち優遇税制と言えましょう。
所得税の大幅減税による金持ち優遇と、消費税増税による低所得者への圧迫、これが格差の拡大をもたらした真犯人です。
法人税も所得税と同じような推移を辿ります。
一時は43%を超えていた税率は、平成になってからどんどん引き下げられ、今はたったの23%です。
引き下げられた理由は、世界的に見て日本の法人税率が高すぎるため、外国企業が日本に進出し難いからということでした。
なるほど、外資系企業を誘致する策としては有効なように見えます。
でも、本当にそうでしょうか?
例えば、私たちがよく利用するアマゾンという会社を見てみましょう。
アマゾンが、年間どれくらいの法人税を日本国に払っているかご存知ですか?
なんと1円も払っていないのです。
ちなみにアマゾンが赤字という訳ではありません。
このからくりは次週で。