株式会社ファイブスターズ アカデミー

まずはお気軽に
お問い合わせください。

03-6812-9618

5☆s 講師ブログ

心の空腹感

「感謝」の気持ちを持つことを教えるのは、とても難しいことです。

そもそも「感謝」というのは自然に沸き起こる感情であり、人から教えられるものではありません。
鎌田實の本の中に、「なるほど、こんな方法もあるんだな」と感心させられるエピソードが紹介されていました。

四国の小さな小学校の校長だった竹下和男が、PTA総会で「子供が作る“弁当の日”を実施します」と宣言したのは2001年のこと。

途端に、ブーイングが沸き起こります。

「包丁や火を扱って、もし事故が起きたらどうするんだ」
「共働きの母親には負担が重すぎる」
「そのために早起きすると勉強に差し支える」

様々な反対意見に対して竹下は静かに、しかし毅然とした口調でこう続けました。

「親は手伝わないでください」
取り組むのは5、6年生で、月に一回のペースで献立決めや買い出しから、調理や後片付けまで全て子供が行います。

最初親たちは、到底無理だろうと思っていました。

ところが子供たちはこの難題に見事に応え、思い思いの弁当を作って登校したのでした。

しかも、この弁当作りを通じて、母親が毎日してくれていることがいかに大変なことなのかを実感します。

感謝とは、本来こうして学ぶべきことなのです。

しかし、効果はそれに留まりませんでした。

この食材がスーパーに並ぶまでに、どれだけ多くの人たちが関わってくれているのかも知ります。
さらには、できるだけ安くあげようとお金の計算をしたり、調理の手順を工夫したりする事で、自分の頭で考える癖もつきました。

ある女の子は、自分の分だけでなく、大阪に単身赴任中の父親と、入院中の祖母の分の弁当も作りました。

週末だけ帰ってくる父親には、月曜の朝会社に向かう新幹線の中で食べてほしくて5時起きして作ったそうです。

父親は、子供が弁当を作っている姿を見て泣き、受け取って泣き、そして食べてまた泣きました。

祖母も病院のベッドの上で泣きながら食べました。

なんと子供たちは、「人に感謝する」ことだけでなく、「人から感謝される」ことも同時に学んだのです。

「感謝」とは、見返りを求めない無償の心でなければ、お互い学びとることのできないものなのですね。

ところがこの取り組み、「感謝」を越えてもっと重大な問題を提起することになります。

弁当作りが中学校にまで波及し、「誰かに食べてもらいたい弁当」というテーマで実施された時に、ちょっとした事件が起きます。

食べたいものを母親から聞き出して、家庭科の授業でさんざん練習したにも関わらず、
その女子生徒が本番当日に作ったのは100%冷凍食品の弁当でした。

なぜこんなことをしたのでしょう?

彼女の言い分はこうです。

「私は今まで一度も母親の手料理を食べたことがない。だからこれは仕返し弁当だ!」

仕事が忙しくて料理をする暇がなかった母親も、この取り組みを通じてとても大切なことに気づかされたのでした。

自分が認めてもらえない。

自分が価値ある存在に思えない。
このモヤモヤ感のことを、竹下は“心の空腹感”と表現します。

あなたも、部下や後輩に「感謝の気持ちを持て」と偉そうに説教を垂れる前に、
“心の空腹感”を抱えて、あなたの手作り弁当を必要としている人がいないか、じっくり観察した方がいいかもしれませんよ。

初めての方へ研修を探す講師紹介よくある質問会社案内お知らせお問い合わせサイトのご利用について個人情報保護方針

© FiveStars Academy Co., Ltd. All right reserved.