株式会社ファイブスターズ アカデミー
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題して「定時退社を導入するとどうなるか」
この人の会社では、1年前から完全定時退社の体制を徹底したそうです。
一方、当然のことながら人員が増員配置されるわけもなく、クライアントの締め切りも変わりません。
まず最初に現れた変化は、企画案の数が減少したことでした。
また、部下の方から「こんな提案はどうですかね」と持ち掛けてくることもありましたが、
なにしろ残業できないのでそんな余裕はありません。
次に現れた変化は、最も時間を食う会議やミーティングが激減したことです。
以上の変化を踏まえてこの投稿者は、
定時退社を導入するのであれば、会社の意思決定を完全なるトップダウン体制に変えなければならないと主張します。
すなわち、上司は「企画案は1つでよい」と明確な指示を出し、
会議やミーティングは、上司が結論を連絡・徹底するだけの会合にしてしまうということです。
私は、この話に強い違和感を覚えました。
たしかに、この人の指摘する現象は、実際に起こったことでしょう。
そもそも部下が何の命令もされていないのに、自発的に「こんな提案はどうですか」などと持ち掛けてくるほど、
前向きに仕事に取り組んでいる会社なんて聞いたことがありません。
さらに言えば、他の人の仕事を自発的に手伝うなどという美談も、私にとっては古き良き時代のこととしか思えないのです。
会議やミーティングだって、すでに本来の自由な意見交換の場などではなく、
「あの時みんな賛成したはずだよね」というアリバイ作りの場に使われている会社だってあります。
つまり、この投稿者の勤務する会社は、一般の会社とはかなり違う状況にあるように思えるのです。
さらには、文面から推察するに、定時退社導入前の残業が月に100時間を超えるような過重なものだったとも思えません。
この会社の場合、多少の残業をしたとしてもそのことでいいアイデアが生まれたり、
クライアントに対してより有効な提案ができたり、メンバーのチームワークがよくなることに繋がっていたとしたら、
それは間違いなく生産性の向上に寄与していたはずです。
一方、今問題になっているのは、トップダウンで命令された仕事を必死にこなすだけでも長時間労働をせざるを得ず、
人間としての尊厳が脅かされるほど劣悪な労働環境にある会社のことです。
会社の置かれた状況が全く異なっているのに、
一律に「定時退社の導入は、どのような影響を及ぼすか」といった議論をするのは誤りです。
私は、定時退社がいいか悪いかという表面的な議論は、全く無意味だと思っています。
多くの場合、部下の作業効率について、上司が詳しく知っているというケースは稀です。
こんな具合だから、上から残業が多いと指摘されると、そのまま「残業を減らせ!」と部下に伝えるだけです。
そもそも労務管理とは、部下がどのようにその仕事に取り組んでいるかを個別に把握し、
それが果たして最善のやり方なのか、改善すべき点はないのかをきめ細かくチェックすることです。
もし、それらをつぶさに分析し、その作業効率を限界まで高めたとしてもなお、
定時退社をすることが無理であるというのならば、それは明らかに仕事量が多すぎます。
ただし、ここで間違えてはいけないのは、「作業効率」の中身です。
別に会社にいなくてもできることです。
社外の人との夜の付き合いなどは、きわめて有効な情報収集の場になる可能性があります。
会社の会議室で考えるよりもいいアイデアが浮かぶことだって期待できます。
そして、普段から頭に浮かんだ様々なアイデアを書き留めておく習慣があれば、
アイデアラッシュの会議は短時間でも内容の濃いものになるはずです。
医学的に見て、十分な睡眠時間を確保していたとしても、頭が冴え渡っている状態というのは、
1日のうちわずか数時間しかないそうです。
冴え渡った頭で考えたアイデアを、企画案という形にするために作業した結果、
もし残業になってしまったとしても、それは会社の生産性アップに寄与する立派な行為です。
ゴールは生産性のアップです。
定時退社というのは、そのために導入するのです。
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