株式会社ファイブスターズ アカデミー
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様々な天然の木材を組み合わせては、それらの色合いや模様の違いを利用して、
絵画や図柄を表現する木画技術を「木象嵌(もくぞうがん)」と言います。
内山春雄はもともと木象嵌師ですが、今ではバードカービング作者という肩書きの方が有名です。
ある時彼は、ダーウィン展を開催しようとした博物館が、ちょっとした悩みを抱えていることを知ります。
ガラパゴス諸島に生息するダーウィンフィンチという鳥は、もともとは一つの種だったのですが、
それぞれが暮らす島の環境に合わせて、嘴が様々に変化していきました。
まさに、生物進化の多様性のお手本を示すような鳥です。
ただし、これを発見したのはダーウィンではありません。
海外の博物館では、この鳥の剥製をズラリと並べることで、
多様な進化のプロセスが一目で分かるようにしているところもあります。
ところが、エクアドル政府が、原則としてこの剥製を海外に持ち出すことを禁じているため、
日本の博物館では写真やイラストで展示するしか方法がないのです。
この悩みを知った内山は、剥製を所有するアメリカの博物館と交渉を始めます。
すると、「日本の博物館ではなく、内山個人になら貸し出してもよい」という返事を貰いました。
日本のバードカービング第一人者として、面目躍如というところでしょうか。
木像のダーウィンフィンチの嘴を直に触っては歓声を上げる子どもたち。
その時、ある考えが閃きます。
狙いは当たりました。
「この鳥は、厳しい環境を生き延びるために、自分のちょっとした長所を最大限に進化させたのだ。
だから皆も、自分のちょっとした長所を見つけて、それをどんどん伸ばしていってほしい」
すると、重いハンデを背負った子どもたちから、困惑の声が上がります。
「私たちに長所なんてあるかしら・・・」
そこで内山は続けました。
「私が『おはよう』と言ったら、みんな『あ、内山先生、おはようございます』と言ってくれた。
君たちは目が不自由な分、人の声を聞き分けられるだけの聴覚を発達させているではないか」
子どもたちの話では、30人くらいは聞き分けることができるそうです。
さらにメールに関しては、音声読み上げソフトを使っているのですが、なんと3倍速で聞いているのです。
これこそまさに、環境に適応して長所を伸ばした典型例ではありませんか。
内山がこんな話をしたのには理由があります。
医者から余命幾ばくもないと宣告され、来る日も来る日も布団の中で天井の木目を眺める日々。
その時母親が、こんなことを言いました。
「お前は確かに人様のように、まん丸でどこを切っても赤くおいしい実のあるスイカではない。
でも、お前にも、どこかきっと赤くておいしいところがあるはすだ。
それを大切にしなさい」
働きながら夜間高校を出ると象嵌師のもとに弟子入りし、一心不乱に修行に励みました。
しかし独立後は、三食すべてオカラという極貧生活も経験します。
大きなハンデを背負った人こそが、他の人には真似できないような才能を開花させる。
もしかしたら、生まれつき人間に与えられているポテンシャルというのは、皆平等なのかもしれません。
秘められた才能を開花させるきっかけは、
「自分の長所はこれだ!」という「勝手な思い込み」なのかもしれません。
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