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5☆s 講師ブログ

スパルタ教育

リオ・オリンピックで、シンクロの井村雅代監督が素晴らしい結果を残しました。

すると世の管理職の中に、井村監督のスパルタ教育を礼讃する人が増え始めました。
厳しい指導こそが、たくましい部下を育てるのだと。

この主張をする人は、だいたい50代以上。

すなわち、若い頃に上司から怒られて育った人たちです。

彼らは、現在の管理職研修で教わる「ほめて育てる」という指導法には、
少なからぬ違和感を覚えている人たちでもあります。

自分たちは怒られて、怒られて、時には叩かれて育ったのだ。

それでも上司や先輩に食らいついて、一生懸命に仕事のコツを盗んだのだ。

今の若い奴らの中にも、そういう風に育てた方が伸びるのがいるはずだ。

やれパワハラだとか言っているから、ヒヨッコみたいなヤワな新人ばかりになってしまう。
ここはひとつ井村監督を見習って、ある程度のスパルタ教育があってもよいのではないか。

この話が出ると、私はいつもこう問いかけます。
「あなたは井村監督ではないですよね?」

井村監督は、誰もが認めるその世界のトップ指導者です。

そして選手も、オリンピックでメダルを取ることを目標に集まった、日本のトップクラスの人たちです。
このような環境ならば、スパルタ教育もいいでしょう。

あなたの場合は、どうですか?

あなたは、あなたの業界において、誰もが認めるトップクラスの管理職ですか?

そして、あなたの部下たちは、業界でトップスリーに入るようなビジネスパーソンになることを目指して、
ぜひあなたの指導を受けたいと入社して来た優秀人材ですか?

もしイエスなら、スパルタ教育もありかもしれません。

そうでないなら絶対にダメです。

スパルタ教育が有効なのは、“超一流”の指導者が、“超一流”の部下を指導するときだけです。
メダル獲得直後のテレビインタビューで、実に印象的なシーンがありました。

井村監督をフォローしようとした司会者が水を向けます。
「厳しい指導をしたのは、愛があったからですよね」

監督はきっぱりと答えました。
「愛はありません」

愛というのは、実に便利な言葉です。

なにせ目に見えないのですから、具体的にどのくらい相手を思いやっていたのかは、誰にもわかりません。

部下がメンタル不全で倒れた時に、「愛の鞭だった」などと詭弁を弄する人さえいます。

さらには、結果が出なかったときにも使えるので、メダルが取れなかった時の言い訳にも使えたでしょう。

ところが、井村監督の頭の中は、選手にメダルを取らせることしかありませんでした。

もしメダルを取れなかったら、当然それなりの責任を取るつもりだったでしょう。
要するに、「愛」とかいうレベルを超えて、結果がすべてというギリギリのエッジで勝負していたのです。

あなたは、スパルタ教育がうまくいかなかった時に、責任を取って会社を辞める覚悟はありますか。

その覚悟がないなら、スパルタ教育などと口にしてはいけません。

いかがですか?

スパルタ教育が有効な場面とは、極めて特殊な状況であることがおわかりいただけたでしょうか。

では、フツーの管理職が、フツーの部下を育てる時はどうしたらよいのでしょう。

それが「ほめて育てる」指導法です。

ところが、この「ほめる」という指導法が結構難しいのです。

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