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5☆s 講師ブログ

真ん中にMを置け

Jリーグチェアマンの村井満が、「PDCAの真ん中にMを置け」と主張しています。

つまり、「PDCA」ではなく、「PD“M”CA」だと言うのです。

PDCAは、どこの会社でも金科玉条の如く祭壇に祀られていますが、「真ん中にMを置く」とは一体どういうことでしょう?

Mとは「ミス」のことだそうです。

すなわち、最初からミスのないPDCAは大した成果をもたらさないということです。

これはかなり意外な発想です。

一般には、ミスを犯さないために綿密なP(計画)が立てられます。
そして、D(実行)の最中も常にC(評価)を行って、A(改善)という微修正を繰り返します。

すべては、ミスを最小限に抑えるためにPDCAを回すのです。
しかし、村井はあえてM(ミス)を中央に据えることで、ミスを恐れるなと教えています。

その精神は、ユニークな独自の評価基準にも表れています。

①今までのやり方で成功しても0点。
②今までと違うやり方で失敗したら50点。
③今までと違うやり方で成功したら100点。

普通の会社では決してこうはなりませんよね。

今までのやり方で成功したら、まちがいなく80点はもらえます。

一方、今までと違うやり方にトライして失敗したら0点どころか、マイナス評価もあり得ます。

もし違うやり方で成功したとしても、社内の口さがない評論家たちは「今回はラッキーだった」とか、
「次回もうまくいくとは限らない」と、血眼になって減点要素を探し出します。

彼らにとって、ライバルの成功ほど不愉快なものはないからです。

結果、大きなリスクを取ったにも関わらず、評価点はせいぜい90点止まりといったところでしょうか。

ですので、決して「優れた能力の持ち主」という評価にはならず、
「たまたまツキに恵まれた運のいい人」という程度で終わりです。

これが「減点主義」下における人事考課の実態です。

なぜ、Jリーグとはこんなに点数が違うのでしょうか?

あなたの会社とJリーグでは、一体どこが違うのでしょうか?

それは、あなたの会社の場合、今までと同じやり方をしていても一定の成果が見込めるからです。

当面の会社存続には、何の問題もないからです。

ちょっと、サラリーマン経営者の在任年数を考えてみましょう。

詳細なデータがありませんので正確なところは分かりませんが、
サラリーマン社長が10年以上君臨するケースというのはあまり聞いたことがありません。
だいたい5~6年くらいが多いのではないでしょうか。

よほど会社が傾いた状態でなければ、
5~6年で一気に倒産にまで追い込まれてしまうというケースはそれほど多くはないでしょう。

つまり、自分の在任中は何とか会社は“持つ”のです。

しかも、最後の決算が大赤字でさえなければ、結構な額の退職慰労金までもらって“逃げ切る”ことだってできます。

そう考えると、在任中に「ミスを恐れずに会社を大改革しよう」などと言う勇気が
なかなか湧いてこないのも無理はありません。

減点主義の人事考課体系下の企業において、
社長まで登り詰めた成功者というのは、間違いなくもっともミスの少なかった人です。

嘘だと思ったら、あなたの会社の役員や部長といった上級管理職クラスの名簿を眺めてみて下さい。

大手柄を挙げて出世した例外的な数人を除くと、ミスが少なかった人ばかり偉くなっていませんか?

ミスを少なくするということは、極力リスクは取らないということです。

極力スネに傷のつくようなことはしないということです。

いいか悪いかは別にして、これが今まで日本の多くの企業を支えて来た人事イデオロギーなのです。
ですので、村井の考え方は極めて異質であると言っていいでしょう。

彼のユニークな発想はどこから生まれたのでしょう?
その原点は、かつて勤務していたリクルートにありました。

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