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5☆s 講師ブログ

残業が多すぎる

安倍政権が、「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入を検討しています。

これは大雑把に言うと、一定要件を満たした場合、ホワイトカラーの残業には手当てを払わないということです。

世の中では、労働強化に繋がると反対意見も多いようですが、この案の意図するところはある程度理解できます。

というのは、日本が他の先進諸国に比べて圧倒的に劣っているのは、ホワイトカラーの労働生産性の低さだからです。

まずホワイトカラーとの比較のため、一般にブルーカラーと言われる工場のオペレーターを見てみましょう。

彼らは、その一挙手一投足まできめ細かく管理されています。
ベルトコンベアーで流れてくる仕掛品について、どちらの手で何秒以内に仕事を完了させるかまで決められています。

中には、外部のコンサルタントがストップウォッチで時間を正確に計り、
オペレーターがかけるべき最短の所用時間を秒単位ではじき出したりします。

場合によっては工具や作業机の配置を変えるだけでなく、
新しい工具を作り出したりして一秒でも短縮しようと努力します。

なぜなら、作業を極限まで効率化しないと、時間当たりの生産量を最大にできないからです。

一定時間内にどれだけの量を生産したかということを、経済学では「労働生産性」と言います。

工場のオペレーターの場合、労働生産性はこのように明確な数値で表すことができます。
そして管理職によって徹底的に管理されます。

これが、日本が「モノづくり大国」になった要因のひとつです。

では、ホワイトカラーはどうでしょう。

単純な事務作業ならば、一定時間内の成果を数値で表すことは可能です。

例えば、キーボードを何百回叩いたとか、申請書を何枚チェックしたとか・・・。
でも、今回ホワイトカラー・イグザンプションの対象と考えられているのは、企画や立案、研究、調査、分析などの仕事です。

これらの仕事を、このようなモノサシで計ることは困難です。

成果を数値化するなどは不可能なように思えます。
でも、実はこのような職種でも、ある数値によって人事考課が左右されていることにお気づきですか?

それは残業時間です。

なんとなく遅くまで残っていると、「頑張っている!」というイメージで見ていませんか。

でも、冷静に考えてみて下さい。
残業時間が多いということは労働生産性が低い、つまり仕事の段取りが悪いという場合が多いのです。

大変不思議なことに、日本では段取りが悪くて遅くまで残っている人ほど、
「頑張っている」と見なされる風土があります。

「いや、能率が悪いわけではない、本当に忙しいのだ」と弁護する管理職もいるでしょう。

でも、よーく考えてみてください。
労働時間が長くなっても能率がまったく落ちないという人は、はっきりいってバケモノです。

絶対にどこかでペース配分を調整しているはずです。

トリンプの元会長、吉越浩一郎は言います。

「時間内に目一杯頑張ったら、へとへとになって残業など絶対できないはずだ」

そのとおりです。

往々にして彼らは、夜何時まで残業するという前提で、自動的にペースの配分調整をしているのです。

では、なぜそんなことまでして部下たちは毎日遅くまで残っているのでしょう。
もちろん残業手当てを当てにしているという側面もありますが、
それよりも残業が人事考課の評価にプラスに働くからです。

仕事の成果がほぼ同じだとしたら、遅くまで残っている人の方を「頑張っている」と評価していませんか?

もし、「みんなが残っている時に一人だけさっさと帰るヤツは組織人とは言えない」
などという考えが頭の片隅にあるとしたら、それはもう高度成長期の思考回路です。

もしそうなら、ホワイトカラー・イグザンプションを導入しても事態は全く変わらず、
成果とは関係なく「私は遅くまで頑張っています」アピール残業が延々と続くことでしょう。

もう一度言います。

残業する人は能率が悪いのです。
成果がほぼ同じなら、定時に帰る人の方が圧倒的に優秀です。

もし、本当に仕事が多すぎて定時に帰れないのだとしたら、そこには別の問題が潜んでいます。

それは、管理職の管理能力がないという問題です。

管理職の仕事は、部下が定時に帰れるように、仕事のボリュームをマネジメントすることです。

メンバーの職務分担を見直したり、さらには職務内容そのものを見直すことで簡略化・効率化を図る。

あるいは、重要度の低い仕事は思い切って割愛したりして、最大の労働生産性を実現する。

労働生産性を考慮に入れずに成果だけを考えているとしたら、これはもう管理職失格というしかありません。

そもそも管理職は、部下の仕事のボリュームどころか、中身についても詳しくは知りません。
もちろん、どんなことをやっているかは知っています。

でも、どのようにやっているかまでは知りません。

与えられた課題について、どんなスケジュールでどんな段取りをしているのか、

データ収集に何時間かかるのか、分析に何時間かかるのか、それをまとめ上げるのに何時間かかるのか、
そこまでメスを入れたことがありますか?

ありませんよね。

実は、私もそうだったからよくわかります。

私は、ただこう言うだけでした。
「何日までに仕上げてくれ」

でもよく考えると、期限までに仕上げることがゴールではありませんよね。

この仕事を通じて、部下が効率的な仕事の進め方を覚えて、最大の成果を出せるようになることですよね。

そのようなビジネススタイルを身につけることによって、他の仕事でも同じように遂行することがゴールのはずです。

何も、仕事の進め方まで手取り足取り細かく指示しろと言っているのではありません。

部下のやり方を上司がキチンとチェックして、
場合によっては部下と一緒になって、もっとよい方法を考えるべきだと言っているのです。

そして次に、その仕事一単位当りのおおよその所要時間を割り出して、
部下の仕事の進行状況をウォッチしろと言っているのです。

例えば、金曜日に翌週分の仕事の概要とその進め方について話し合ってみてはどうでしょう。

たった10分話すだけで、今まで霧の彼方で見えなかった部下の仕事のやり方が、はっきりと“見える化”できますよ。

もちろんこれを実行したとしても、結果として残業せざるを得なくなる時もあるでしょう。

それは仕方ありません。

私が強調したいのは、部下の仕事に上司がメスを入れることの重要性です。
ホワイトカラーの残業時間は、完璧に上司のマネジメントによって決まります。

上司が、「残業時間が多いヤツは能率が悪い!」という考え方を職場に徹底できれば、
終業のベルとともに部下はさっさと帰るはずです。

なぜなら、残業することは人事考課上マイナス要素となるからです。
例えば、わざわざ遅刻してマイナスの考課を受けたがる部下はいるでしょうか。

考課の対象は、あくまで成果です。
残業時間には関係なく、どのような成果を上げたかを数値化すればよいのです。

難しい話ではありません。

なぜなら、今だって人事考課の際に課内のメンバーに序列をつけたり、
ランク付けや点数付けをしているではありませんか。
その中身を、もっと踏み込んで精度を上げると考えてみて下さい。

精度を上げるためには、部下が今日一日どれくらいのボリュームの仕事を、
どれくらいのスピードでやっているのかを明らかにする必要がありますよね。
上司がそこまでつぶさに知っているなら、部下はどんな考課をされても文句は言わないはずです。

人事考課に対する部下の不満はだいたい同じです。

「オレがどれだけ苦労しているか、何もわかってないくせに!」
このような不満を言わせないためにも、もっともっと上司が部下の仕事にメスを入れることが重要なのです。

時々、「時短勤務の人が早く帰るので困っている」という管理職の声を耳にしますが、
これこそ管理職が部下の仕事の中身にメスを入れていない証拠です。

「いや、そんなことはない!時短の人の職務はすべて洗い出して見直した」と言う人もいるでしょう。

でも、その職務の応援に回るメンバーの仕事はどうでしょう?

その人たちの仕事内容も、キチンと洗い出して見直ししたでしょうか?
そう考えると、時短勤務者が出ることは、組織全体の仕事の見直しの機会かもしれません。

そう言えばあるシンポジウムで、育休明けの時短勤務者が多くなり、事務部門では吸収しきれなくなったことが報告されました。
そこでこの会社は、営業の経験者に関しては営業部門にも再配属したそうです。

すると、その人たちの方がフルタイム勤務者より営業成績がよかったというのです。
やっぱり、段取り八分ですよね。

あ、一つ大事なことを言い忘れました。

ホワイトカラーの仕事内容については、各企業において厳密な定義づけをすることが大原則です。

間違っても、白い襟のシャツをきた人をホワイトカラーというのではありません。

特にブラック企業なんかは、着ているのはホワイトカラーでも、
やっている仕事はほとんどブルーカラーに分類されるものばかりですから。

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