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5☆s 講師ブログ

ボス潜入

これほど面白く、そして考えさせられるビジネス番組が、かつてあったでしょうか。

以前、NHKのBSプレミアムで放映されていた『覆面リサーチ ボス潜入』です。

社長がメガネやかつらで変装し、転職を考えている職場体験者という触れ込みで、自社のあちこちの現場に潜入するのです。

そして、その転職ドキュメンタリーという体で、カメラが密着取材します。

発祥はイギリスだそうですが、CBSネットワークがアメリカ版『アンダーカバー・ボス』を制作したところ大反響。

今度はNHKが、日本版をリメークしたというわけです。

でも、いくら何でも自分の会社の社長なのだから、すぐにバレるだろうと思いますよね。

ところが、プロのメイクさんの手に掛かるともう全くの別人なのです。
そもそも社長が変装してこんなところに現れるはずないだろう、という思い込みも手伝って誰一人気づきません。

社長の側も、もし素性を聞かれた時のことを想定して、
設定された架空のプロフィールを丸暗記するほどの念の入れようです。

社長ではなく常務などが代わって潜入することもありますが、こうなるともはや完全にお手上げ状態。

従業員は露ほども疑いません。

まず最初に苦笑させられる場面は、潜入した社長が現場の足手まといとなってしまい、かなり凹んでしまうシーンです。

それでも、取材に値する優秀なエキスパートが対象として選定されているためか実に上手に指導してくれます。

そして、名人芸どころか“超絶技法”ともいうべきテクニックを駆使して、
見事に仕事を捌く姿に社長は目を見張ります。

お昼になりやっと一息。

ランチを一緒に食べながら、現場の苦労話に耳を傾けます。

これも圧巻です。

社長室に座っていては決して知り得ない、一人ひとりの仕事や家族への想いが吐露され、
目頭が熱くなることもしばしば。

やがて社長は、現場と本社の距離があまりに遠いことに気づきます。

現場の様々なお困り事が、全くと言っていいほど上に伝わっていないことが判明する瞬間も見どころです。
いや正確に言うと、上に伝えても本社からにべもなく却下されてしまうのです。

ある機械のメンテナンスを本社に掛け合った時など、
「社長がダメだと言っている」という理由で断られたエピソードが披露されます。

全く身に覚えのない潜入社長は、思わず目が点に・・・

また、物流会社の配送センターで、ハンディ端末が頻繁に不具合を起こすというケースでは、

現場責任者が「上の人は、自分が操作するわけじゃないから」と何気なく不満を口にします。
その時、端末を手にしていたのは、まさに「上の人」だったのですけど・・・

こんなマンガみたいな展開の中で気づくのは、会社がある程度大きくなると、
現場の情報が途中で取捨選択され、耳障りな話は社長室に上がって来なくなるということです。

これが現場と本社の距離です。

トヨタが何よりも現場を大切にしている理由がよくわかりました。

現場には、本社の会議室で目にする数字からは、決して推し量ることのできない現実があります。

そして多くの場合、そこにある問題を解決することが現場の社員の士気を高め、
結果的に業績アップに繋がっていくのです。

あなたの会社でも、ピラミッド組織のどこかで、情報の目詰まりが起きていませんか?

でも、いくら現場の本音が聞きたいからと言って、トップがその都度カツラをつけて潜入するわけにはいきません。

普通に現場を視察したとしても、はたして本音は出てくるものでしょうか?

安心して下さい、出ますよ!

というのは、後で本社に呼ばれてネタばらしされた現場の担当者の多くがこう言うのです。

「社長と知っていたら、もっと言いたい事があったのに・・・」

なんということでしょう。

彼らは社長を恐れていないのです。

一般にサラリーマンというものは、上司による人事考課を気にします。

ましてや相手が社長となれば、その評価が今後の出世に影響するのは必至。
ところが彼らには、見事なまでにその視点が抜け落ちています。

彼らが恐れているのは、社長から低い評価を受けることではなく、お客様から低い評価を受けることです。

そうです。
お客様の評価がすべてなのです。
その評価を高めるためなら、相手が社長だろうが誰だろうが躊躇なく自分の意見をぶつけるのです。

経営のトップは、肝に銘じるべきです。

このような、信念をもって職務を全うしている市井の従業員こそが、会社を支えているのだということを。

間違っても、上司に気に入られようとヒラメのごとく上ばかり見て、
点数稼ぎに余念のない社員たちが会社を支えているわけではありません。

そして、このようなヒラメ管理職こそが、現場の声を途中でシャットアウトしている張本人ではないでしょうか。

現場で、お客様のために懸命に頑張っている社員の汗や体温を感じられなくなったとき、
会社の転落が始まるのでしょう。

ところで、シリーズの中で最も感動的だったのは、ブライダル企業の回でした。
披露宴会場の食器の洗い場を仕切るのは、80才近いアルバイト女性。

脳腫瘍の手術を2回受けたと言いながらも、
八面六臂の大活躍で山と積まれた食器を瞬く間にきれいにしてしまいます。

もしこの人が倒れたら、恐らく洗い場の仕事は回らなくなるでしょう。

この姿に深い感銘を受けた社長は、感謝状と金一封を贈ります。

ところが、満面の笑みで賞状を眺めていた女性は、金一封だけは断固として受け取りを拒否しました。

彼女は“お金”のためではなく、“誇り”のために仕事をしていたのです。
社長は、自らのゲスな提案を深く恥じました。

そして次に、九州にある結婚式場の責任者が登場します。

彼の仕事ぶりに、私は驚きを禁じ得ませんでした。

この式場は駅から遠いため、みんな車やタクシーで来場します。

当然、新郎や新婦もそうです。

なんと彼は、車寄せでドアを開けた瞬間に、「○○様、おはようございます」と名前を呼んで声をかけるのです。

例え十数組の式があろうとも、完璧にこなします。

秘密は朝にありました。

その日挙式予定のカップルの、顔写真と車種を全て頭に叩き込んでいたのです。

ところがこの日、最後の披露宴が終わる頃に問題が発生します。

同時に進行している二つの宴の終わりのタイミングには、15分という時間差が設けられていました。
それは、駐車場が混雑しないようにとの肌理細かな配慮からです。

しかし、片方の宴が予定より延びたため、終了が同時になりそうだという報告が入ってきます。

降りしきる雨の中、傘も差さずに駐車場に飛び出した彼をTVカメラが追いかけます。

早足で歩き回りながら、耳の上辺りを人差し指で盛んに叩いて「考えろ!考えろ!」と一人ごちます。

そして、車やタクシー、送迎バスなどをパズルのように数十センチ単位で次々に移動させ、
最も効率的な配置を完成させたのです。

宴の終了後、多くの人がどっと押し寄せますが、少しの渋滞も引き起こすことなく
数十台の車をあっという間に捌いてしまいました。

ねっ!

やっぱり“超絶技法”でしょ。

しかし彼には、現場に欠かせない人材だからこその悩みがありました。

結婚してすでに5年。
子供が二人もいるのに、あまりに忙し過ぎて、未だに自分の結婚式を挙げることができないでいるのです。

その彼が本社に呼ばれネタばらしされた後、負担を軽くするためにサブの人材を送ると社長から伝えられます。

しかし、これで終わりではありませんでした。

社長の案内で、リニューアルされた本社の結婚式場を見学している時、社長が突然合図します。

すると扉が開き、純白のウェディングドレスに身を包んだ奥さんが現れたではありませんか。

何というサプライズ!

そして、その後ろに続くのは花束を抱えた幼い子供たち。

大勢の本社スタッフが駆けつけ、花吹雪のアーチを架ける映像をバックにエンドロールが流れます。

人の心を掴むのは、やっぱり“浪花節”でした。

「お客様に感動を提供せよ」と、現場に発破をかけるトップはたくさんいます。

しかし、現場の社員を感動させることのできるトップは、どれくらいいるのでしょうか。

大企業病などと言いますが、その病根はトップにあるのではありませんか?

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