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5☆s 講師ブログ

エンガワ理論

思い込みというのは誰にでもあるものです。

どんなに気をつけていても、知らず知らずのうちに思い込みに囚われていることが案外多いもの。

ビジネスではロジカル・シンキングが絶対必要だと言いながらも、
結構非ロジカルな根拠で判断してしまっていることはありませんか。

有名な人事コンサルタントが講演で紹介したエピソードを聞いて、思わず笑ってしまいました。

ある人事部長の思い込みです。

新卒の採用がようやく終わり、さあこれから配属先を決定しなければという段階になって、
人事部門は頭を悩まします。

ついこの間面接しただけの学生の適性なんて、詳しくわかるはずありませんよね。

特に、花形部門への配属を誰にするかは大問題です。
優秀な人材を送り込まないと、部門長からクレームが来るかもしれません。

ところが、この人事部長には秘策がありました。

優秀人材の選定に関しては、絶対的に信じている法則があるというのです。

まず、回転寿司店で内定者の懇親会を開催します。

そして、好きなネタを好きなだけ食べていいと告げます。

そのとき、ある特定のネタを食べた学生が優秀人材なのだそうです。

そのネタとは「エンガワ」。

彼によれば、代々の内定者を観察したところ、優秀な学生は例外なく「エンガワ」を注文していたとのこと。

こうなると、もはや都市伝説ですよね。
ここまで極端な例は珍しいとしても、私たちは過去の経験値から導き出した法則とか、
あるいはなんとなくの直感で決めてしまっていることが結構あります。

2013年12月に、『裏切り者検知アルゴリズム』という心理学の理論を書きました。

その時、推論研究の世界では大変有名な『ウェイソンの選択課題』を紹介しましたが、
今回はそれを少しアレンジした問題です。

元FBI行動分析課のプロファイラーでサイコパス研究の第一人者、ケヴィン・ダットンの本で見つけました。
ぜひ、チャレンジしてみて下さい。

今、4枚のカードがあります。

「3」「8」「赤」「茶」。

【問題】この時、「カードが偶数の数字なら、その裏の色は赤でなければならない」
というルールが成立しているかどうかを確かめるには、どのカードをひっくり返せばよいですか?

「3」と「赤」と答えた人、おめでとうございます。

あなたは、めでたく大多数のグループに入ることができました。

しかし残念ながら、正解者のグループに入ることはできませんでした。

正解は、「8」と「茶」です。

ちなみに、イギリスの大学での実験では、この手の問題の正解率は4%しかなかったそうですのでご安心ください。

では、ロジカル・シンキングで謎解きをしましょう。

もし、「3」のカードの裏が「赤」だったとしたらどうでしょう。

ルールは成立しないことになりますか?
もう一度問題をよく読んでください。

「偶数の裏が赤」とありますが、奇数の裏については何も言っていませんよね。

ということは、奇数の裏は何でもいいということになります。
茶でも青でも白でもいいのです。

ということは、赤でもいいことになります。
だから、「3」の裏が「赤」であってもルールには違反していません。

以上の理由で、「赤」と「3」は排除されます。

間違えてはいけないのは、「偶数の裏が赤」というルールは、
「赤の裏が必ず偶数」という意味ではないということです。

一方、「8」という偶数のカードの裏が赤以外だったら大問題です。

「偶数の裏が赤」というルールに反するからです。

同様に、「茶」の裏が偶数だとこれも大問題です。

よって、正解は「8」と「茶」になるわけです。

おわかりいただけましたか。

さてここで、先ほどの人事部長の『エンガワ理論』と照らし合わせてみましょう。

部長の中では、このようなルールが成立しています。

「優秀な者はエンガワを注文する」百歩譲って、この法則が正しいと仮定しましょう。

いや、ご異論があるのは十分承知しています。

ただここは検証のために、少しの間だけこらえてください。

仮に内定者が20人いるとしましょう。

その20人のうち入社試験の成績でも、また面接の評価でもトップだった人がエンガワを注文しました。
人事部長は思わず膝を叩きます。
見たか、やっぱりオレの言ったとおりだろう!

しかし、エンガワを注文したのはこの人だけでしょうか。

全体では5人くらいいたかも知れません。

つまり、「優秀な者はエンガワを注文する」というルールは、
「エンガワを注文する者は必ず優秀だ」という意味ではないのです。

ほらね、さっきのカードの問題と同じカラクリでしょ。

でも、人事部長の法則はすぐに誤りだと気づきますが、カードの話はなかなか正解がわかりませんでした。

そう考えると、もしかしたら『エンガワ理論』と似たような思い込みが、あなたの会社にもあるかもしれませんよね。

例えば、「エンガワ」を「勉強家」とか「積極的」といった言葉に置き換えてみてください。

管理職の頭の中には、無意識のうちに経験から導き出した『○○理論』が多かれ少なかれ存在するはずです。

もっと言えば、管理職の数だけ『○○理論』が存在するかもしれません。

それが、日頃のマネジメントや人事考課に微妙な影響を及ぼしてはいませんか。

世の中に氾濫するビジネス書という名の『出世指南書』には、もれなく「上司に好かれなさい」と書いてあります。

また、「人事は好き嫌いで決める」と公言して憚らない経営者は意外に多くいます。

日本の人事制度において、上司の“ヒキ”は、昇進に多大な影響を与えます。

私たちは上司の『○○理論』を受け入れるしかないのでしょうか。

最近は、このような弊害を避けるため、人事考課までAI(人工知能)で行う企業まで出てきたそうです。
私は一刻も早く、客観的で科学的な人事理論が確立されることを望みます。

そうでないと、好きでもない「エンガワ」を延々と食べ続けなければならない人も出てくるのですから。

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