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5☆s 講師ブログ

“優秀”の定義

「他部署で“優秀”と評価された若手でも、この部署に来ると必ずしもそうではないんです」

ある行政機関の管理職の言葉です。

一般にビジネスの世界で“優秀”と言われる人は、利害関係者の調整能力に優れた実務家です。

たとえば、あるプロジェクトが立ち上がると、いち早く関係者の間を立ち回り、
実現の可能性が高い完成形のイメージ作りをします。

また、関係者の間で利害が対立しそうな問題があると、全員の妥協が得られそうな最大公約数を探ります。

そしてそこを“落としどころ”と定め、微調整を繰り返しながら交渉していきます。

短期間で一定の形に仕上げるので、一見するとどんな部署でも重宝がられる“優秀”ビジネスパーソンに見えますが、

私はそうは思いません。

なぜなら、プロジェクトの本質に関する議論が尽くされていないからです。

早く形にすることにこだわるあまり、その核となる思想が何なのかを突き詰めていないのです。

哲学に裏打ちされていない実務家は、所詮”便利屋”でしかありません。

プロジェクトが1~2年で終了するものならそれでもいいでしょうが、

5年先、10年先を見据えた中長期のビジネスだった場合は、絶対に歴史の評価に耐えることができません。

ところで、冒頭に紹介した発言にあった部署とは、市役所の徴税課です。

徴税課の主な仕事は、税金を滞納している人に早く支払うよう督促することです。

時々、テレビで税金Gメンの活躍ぶりが取り上げられることがありますが、
滞納者がヤケになって激高することも多く、暴力的な言葉で威嚇される事もよくあります。

身の危険を感じることもあるでしょう。
先日は、滞納している税金を再三督促されたことにキレて、市役所にガソリンを撒いて放火した男もいました。

しかし、いくら相手が怖いからと言っても、その場から逃げ出してしまっては、
税負担の公平性という大原則が損なわれてしまいます。

いったんゴネ得を許してしまうと、真面目に税金を払っている納税者の中からも
後に続く不届き者が現れてくるのは火を見るより明らか。

徴税課の仕事というのは、本当に大変だとつくづく思います。

彼らにとって、利害調整能力などさして重要ではありません。

それよりも、「本来こうあるべきだ」という強い“信念”や“使命感”の方が重要です。

暴力的な言葉で威嚇されると、すぐに相手との妥協点や落としどころを探ってしまう能力などというのは、
この業務を遂行する上では却って邪魔なだけです。

私が言いたいのはそこです。

表面だけ取り繕った優等生的な仕事というのは、今直面している重圧を一時的に凌ぐことはできたとしても、
将来にわたりビジネスを支えていくような太い屋台骨にはなり得ません。

しっかりした屋台骨を作るには、愚直なまでの“信念”が必要なのです。
何事もソツなく器用にこなす人物は、人事考課の場面では有利かもしれませんが、
5年先、10年先を支える組織の屋台骨を作ることは不可能です。

『ザ・グレンリベット』(2014年4月)の回で紹介しましたが、中坊公平はこう言っています。

「一般に“優秀”と言われる『着手先行型』の人間には、骨のある仕事はできない。
それができるのは、自分のポリシーを決して譲らない『理念先行型』の人間である」

そして、こう続けました。

「今やっている仕事の本当の評価は、100年先でないとわからない」

あなたのチームの最も優秀な部下が、もしも徴税課のような“信念”を問われる部署に配属されたら
一体どんな振る舞いをするでしょうか。

“信念型”優秀人材なのか、あるいは“便利屋型”優秀人材なのか、一度思考実験してみるだけの意味はあると思いますよ。

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