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5☆s 講師ブログ

5つの能力のうち

以前、IT企業の管理職研修をしていたとき、こんな悩みを聞きました。

「そもそも私は、クオリティの高いプログラムを、人より早く作る能力があったのでマネージャーに登用されました。

別に、部下をマネジメントする能力が優れていたから登用された訳ではないんです。
でも、いざマネージャーになってみると、そっちの能力の方がはるかに重要なんですよね」

今、多くの職場で、専門能力が高いという理由で管理職に登用されるケースが増えています。

しかし、専門能力が高いということは、管理職登用にあたり最優先に考えなければならない能力なのでしょうか。

例えば、極めて優秀な営業マンを営業マネージャーに登用した場合を考えてみましょう。

優秀な営業マンというのは、商品知識や商品の説明スキルなどの専門能力が突出しています。
さらには、必ずノルマを達成するぞという強固な意志の持ち主でもあります。

ところが、昇格したマネージャーが部下を見渡してみると、
挨拶も満足に出来ないようなヒヨッコばかりではありませんか。

マネージャーの仕事は部下育成だというのは十分わかっていますが、
一方で今月の売上数字は待ってはくれません。

そうなると、管理職でありながらも一人のプレイヤーとして、数字を挙げることに奔走せざるを得なくなります。

その結果、専門能力の高い管理職ほど、ますますプレイング・マネージャー化していくのです。

プレイすることと部下を育てることが全く別物であることは、プロ野球の監督を見ればよくわかります。

昔から「名選手必ずしも名監督ならず」と言いますよね。

名選手というのは、人並み外れた天賦の才能を持っているか、

あるいは気の遠くなるような努力を積み重ねることで名選手になれたのです。
でも、ほとんどの選手は人並みの能力と、そして人並みの意欲しか持ち合わせていません。

名選手だった人間から見れば簡単なプレーでも、フツーの選手にとってはとんでもなく高度な技術です。
名選手が監督になったとき、必ずこのジレンマを経験します。

ということは、たとえ管理職が優れた専門能力を持っていたとしても、

それがそのまま部下育成にとって大きなアドバンテージになるとは限らないのです。

では、管理職にとって最も必要とされる能力とは何でしょう?

コンピテンシーの専門家であるジョン・H・ゼンガーは、こんな手法でこの能力を調べました。
まず、ある大企業の管理職を分析して、優秀なリーダーとして必要な能力を以下の5つに絞ります。

①個人的な能力(知性、問題解決力、専門知識、訓練能力など)
②最後までやり抜く能力(プロジェクトを前に進める強い意志と完了させる力) 

③人格(高潔さ、信頼性) 
④組織を変化させる力 
⑤対人能力

そして、それぞれの能力について、部下が自分の上司を評価します。

次に、管理職を2:6:2の法則に従って区分して、

最も優秀な上位2割に入る管理職は、一体どの能力が部下から高く評価されているのかを調べました。

つまり、上位2割の優秀層に入るためには、5つのうちどの能力が重要なのかを明らかにしたのです。

ただし、たった一つの能力に絞るのは危険なので、2つの能力の組み合わせで見てみました。

すると、⑤の「対人能力」と他のどれかが組み合わさった時、上位2割に入る確率がもっとも高くなりました。

なんと72%です。
一方、②の「最後までやり抜く能力」と他のどれかの組み合わせは、たったの14%しかありませんでした。

「対人能力」がカギだったのです。
この場合の「対人能力」というのは、部下が判定している訳ですから「部下との対話力」と言い換えてもよいでしょう。

この結果は、会社の昇格人事のあり方について一石を投じるものではないでしょうか。

人事部は、昇格人事を決定する際に、
各候補者の「部下との対話力」に関して一体どれくらいのデータを持っているでしょうか。

いや、そもそも部下との対話力というのは、一体どうやって測定したらよいのでしょう。

冷静になって考えてみると、①の「個人的な能力」(知性、問題解決力、専門知識、訓練能力など)というのは

もっとも測定しやすい項目です。
簡単に数値化できるので、昇格候補者間の比較も容易です。

もしかしたら客観的な比較が容易であるということが、
この能力にスポットライトが当たる理由のひとつになっているのかもしれません。

個人的な能力が高いことと、管理職としてのマネジメント力が高いことはまったく違います。
ですので、個人的な能力が高い人の処遇は、管理職登用以外で考えるべきです。

西郷隆盛はこう言いました。
「功があった人には禄を与えよ。徳があった人には地位を与えよ」

その抜きん出た個人的能力で会社に利益をもたらした人に対しては、特別ボーナスで報いるべきです。
管理職という地位で報いるべきではありません。

今、人事部がやるべきことは、管理職に必要とされる能力要件は何かをすべて洗い出すこと。
そして、それぞれの能力要件のウェートを数値化することです。

でも、問題はその後です。

結局、対人能力、すなわち部下との対話力が重要だとわかったところで、
どうやってその能力を伸ばしていくかです。

これは難問です。
そこで、ちょっと視点を変えてみましょう。

新規に管理職に登用された人は、はたしてどういう行動をとるでしょうか。

多くの人は、まず自分が過去に仕えた上司をイメージします。
次に周囲の先輩管理職を観察します。
そして、彼らの良いところを頭の中でピックアップして、それを真似ようとします。

あくまでお手本は、あなたの会社の現任管理職なのです。

その限りにおいて、結果的にあなたの会社に代々伝わる、
伝統的なマネジメントスタイルが踏襲されていくこととなります。

この時、伝統的なマネジメントスタイルの中に、「部下との対話」があれば問題ありません。

しかし、もしそうでないとしたら、部下との対話力を伸ばさなければならないのは現任の管理職の方です。

新規の管理職登用をどうするかという議論は、
そもそも「わが社の管理職とはどうあるべきか」を考えるよい機会でもあるのです。

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