株式会社ファイブスターズ アカデミー

私はＦacebookをやりません。
それには理由があります。

ブログやFacebookを頻繁に更新して、芸能人でもないのに自身の私生活情報をやたらと公開する人がいますが、
これは度し難いナルシストです。
そもそも、自己主張の場ということであれば、私にとってはこのブログで十分すぎるほどです。
他人が読むに値するモノを書くというのは大変苦しい作業で、週に一回のペースでも厳しいくらいです。

でも、Facebookをどうしてもやりたくない理由は別にあります。
それは“友達”という言葉に引っかかるからです。

こんなにたくさん“友達”がいるぞ、とネットワークの広さを自慢する人もいますが、
“友達”とは一体何を指すのでしょうか。
“知り合い”とはどこが違うのでしょうか。

私には、Facebookの“友達”の定義がよくわかりません。
面倒くさいことを言ってると思われるかもしれませんが、
言葉を扱う職業の人間にとっては、かなり重要なテーマです。

私は“友達”という言葉を聞くと、真っ先にＡ.ビアスの『悪魔の辞典』を思い出します。
『悪魔の辞典』はその名の通り辞書ですので、様々な言葉の意味を解説していますが、
一般の辞書と異なるのはかなり皮肉が交じっていることです。
例えば、「背中」という言葉の意味をみてみましょう。

背中 (BACK）［名詞］
あなたが逆境に陥ったさい、つくづくと眺める特権を許される、友人の体の一部分。

確かに、仕事やプライベートが順調な時にはオトモダチはたくさんいます。
しかし、ひとたびトラブルに見舞われたり、あなたがピンチに陥った途端に、
手のひらを返したようにあなたから離れていく人もまた大勢います。
「ママトモ」なんてのは、その典型例ではないでしょうか。

いかがですか？
そういう人も“友達”ですか？
私は、「いいね」ボタンをたくさん押してくれる人ではなく、
苦境に陥った時に手を差し伸べてくれる人こそが、本当の意味での“友達”だと思います。

あなたも、友達の大安売りは少し控えて、Facebookの友達リストをじっくり眺めてみてはどうですか。
そのリストの中に、いざという時サポートしてくれそうな人は一体何人いますか？

そういう人がひとりでもいれば、あなたの人生はきっと豊かなものになるでしょう。
冷笑家と言われたビアスでさえ、友達がいないことは不幸だと言っています。

友のない (FRIENDLESS）［形容詞］
人に施し得る恩恵を何一つ持たぬ。富に見放された。もっぱら真実と常識を口にする悪癖のある。

この「友のない」で言われていることは、先ほどの「背中」の定義とは表と裏の関係にあります。
苦境のあなたに背中を向ける友人を恨むのではなく、
まずはあなたから先に友人に何かを与えなさいと言っているのです。
そして、その“友達”こそが“富”、つまり人生の“財産”であると言っているのです。

真実だとか、常識だとかという損得勘定を超えた関係こそが、“友達”と定義されるものなのです。
完全論者でエゴが強かったため、ほとんど友人がいなかったビアスの淋しい本音が顔を覗かせた瞬間です。

こんなビアスでも、南北戦争の際に銃弾飛び交う中で重傷を負った戦友を救出したことがあるのですが、
大正末年に八巻から成る英文教科書を編纂し、その中で初めて日本にビアスを紹介した芥川龍之介でさえ
その事実はご存知なかったようです。

いざという時に、あなたに背を向けるような薄っぺらな友達など、
あなたの人生にとって大して意味はありません。

それより、たったひとりでいいから、真の“友達”を作る努力をしませんか。