株式会社ファイブスターズ アカデミー
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企業の人事部門が抱える大きな課題のひとつに「人材開発」があります。
中には、社員は宝だという意味でしょうか、「人“財”開発」と表記しているところもあります。
しかし、開発される側の一般社員としては、「人材」の一体どこが「開発」されているのか理解に苦しむこともしばしば。
ある学者が「開発」という言葉ではなく、「発達」という言葉を使うことを提案していました。
なるほど、「人材発達」の方がわかりやすいですよね。
ついでに、「人材」という言葉も「能力」という言葉に置き換えたらどうでしょう。
「能力発達」
これならやるべきことが明確化されます。
「部下の人材を開発する」よりも、「部下の能力を発達させる」の方がわかりやすいと思いませんか?
以前、“人間力”という表現をしたところ、わかりにくいとブーイングを受けたことがあります。
一般に「人材開発」というときには、どうしてもこのような、
なんとなく人間性に関係する曖昧なニュアンスが入り込んできてしまいます。
例えば、人望があるとかないとかという議論です。
でもこれだって、能力発達という視点から言うと、
「人望を集める能力を発達させる」という表現に言い換えることができます。
えっ?
それは一体どんな能力だって?
もうお忘れですか!
それこそ、かつて一世を風靡した“コンピテンシー”に他ならないではありませんか。
復習の意味で振り返ってみましょう。
コンピテンシーは、一般には「行動特性」と訳されます。
例えば、優秀なセールスマンの行動特性を分析すると、翌週のアポはすべて前の週にとっているとか、
電話は要件をテキパキ伝えるので時間的に短いとか、営業に必要な資料は遅くとも3日前には準備できているなどです。
ハイ・パフォーマーの日常行動を分析していくと、
ミドル・パフォーマーやロー・パフォーマーとは異なる行動をとっていることが浮き彫りになります。
このように、ハイ・パフォーマーに特徴的に見られる行動特性こそが、すなわちコンピテンシーなのです。
ただ、コンピテンシーを展開するにあたり、致命的な誤りだったのはこれを人事考課に使ったことです。
本来これは考課や評価ではなく、指導育成の場面で活用すべきものです。
ハイ・パフォーマーの行動をそっくりそのままマネさせるだけで部下は育つのです。
ウソではありません。
なぜなら、部下の価値観や仕事に対する取組姿勢を変える方が、はるかに難しいからです。
変えるべきは、思想ではなく行動です。
当時は、外資系のコンサル会社に、この行動特性の洗い出しと
それをまとめたコンピテンシー・ディクショナリーなるものの作成を依頼するだけで、
場合によっては億単位の見積書が届いたものです。
コンサル会社としては、クライアント企業が“人材育成”のために多額の金を出すとは到底思えなかったので、
比較的予算の取りやすい“人事考課”という費目の方を狙ってアプローチしたのでしょう。
ある意味、日本企業の人事部門が抱える決定的な問題点を見切っていたとも言えます。
でも、よく考えてみると、こんなディクショナリーなんて、観察力さえあれば社内で作れるはず。
例えば「人望を集める能力」だって、会社の中で人望があると思われる人の行動を片っ端からリストアップしてみたら、
自ずといくつかの特徴的なクセがあぶり出されるはずです。
例えば、部下の話はキチンと目を見て最後まで聴いているとか、
問題点を指摘する前に2回ほめるか承認するとか、
話の最後には「期待してるぞ」と笑顔でポンと肩をたたいたりします。
また、問題が発生したときは部下に責任転嫁することなく、自らが傘となって部下を守る行動をとります。
いかがですか?
ちょっと思い出すだけで、10個くらいすぐに浮かびませんか?
ちなみにトヨタの場合、管理職クラスの人事考課では、5つある評価軸のうちの一つが「人望」だそうです。
おそらくそこには、判断基準として具体的な行動例が書かれているのでしょう。
さあ、行動特性がわかったら、後はそれを徹底的にマネすればいいだけです。
このように考えると、「人望」という霧に隠れて頂上の見えない高い山でさえ、登山道らしきものが見えてきます。
ルートがわかったら後は登る、つまり行動に移すだけです。
しかし、それでもまだ、やらないための言い訳を一生懸命探し出してきて、
なかなか実行しようとしない人もいます。
このような人の能力が発達することは、絶対にありません。
なぜなら、その人は自分の意志で、
自分の能力を発達させることを断固拒否しているからです。
今の自分の能力がパーフェクトと思っているのかどうかはわかりませんが、
いずれにせよ「オレは今後、1ミリたりとも成長する気がない」と堂々と宣言している人です。
あなたの部署にもいませんか?
こんな発達障害のマネージャーが。
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