株式会社ファイブスターズ アカデミー

ニュートンが、木からリンゴが落ちるのを見て、地球に引力があることを発見したという話は、
半分本当ですが半分はウソです。

「万有」という言葉が表しているように、すべてのものは、引力を持っています。
すなわち、地球は引力を持っていますが、リンゴの方も引力を持っているということです。

ですので、正確に言うとこうなります。
地球とリンゴは、お互いの引力に引き寄せられて近づき、最後には衝突してしまった。

詳しい数値は後で示しますが、まず万有引力について説明しましょう。
ニュートンが１６８７年に「プリンキピア」の第３編、命題４、定理３で論証したのは以下のことです。

２つの物体の間に働く引力は、それぞれの物体の質量の積に比例し、物体間の距離の２乗に反比例する。

ニュートンは、リンゴが木から落ちるのを見て、リンゴがもっと高いところにあったら落ちるだろうかと考えました。
どんどん高く想定していくうちに、なぜ月は落ちてこないのかという疑問にぶつかります。

もし、あまりに高すぎて落ちてこないのだとしたら、逆に月はなぜどこかへ飛んでいってしまわないのでしょうか。
そこでニュートンは、地球と月がお互いに何らかの力で引き寄せ合いながら、
その力がちょうど釣り合っているのではないかと考えたのです。

先ほどのリンゴと地球の衝突について、数学的に解析してみましょう。
今、３メートルの高さから２００グラムの重さのリンゴが落下するとします。

リンゴは３メートル地球に近づきますが、地球も理論上極々僅かではありますがリンゴに近づきます。
では、地球はどのくらいリンゴに近づくのでしょうか。
地球が近づく距離を計算で求めると、１０の－２５乗メートルとなります。

ここでわからないのは－２５乗の意味ですよね。
２５乗ならわかります。
１０×１０×１０×・・・と、１０が延々と２５個並ぶことです。

－２５乗の場合は、１０の数字が１/１０に置き換わります。
つまり、１/１０×１/１０×１/１０×・・・と、１/１０が延々２５個並ぶのです。

１/１０が２個並ぶと１/１００、３個並ぶと１/１０００ですので、２５個も並んだら相当小さな値となります。
これは無視できるレベルですので、地球は動かなかったと言っても間違いではありません。

何だ、大騒ぎした割には結局同じじゃないか、と思わないで下さい。
大事なのは、引力は両方に働いているということです。
それを踏まえた上で、今度は２つの物体間の距離に注目してみましょう。

引力は距離の２乗に反比例するのですから、離れれば離れるほど、お互いが引き合う力は急激に弱まります。
逆に、近づけば近づくほど両者は非常に強い力で引き寄せ合うことになります。

これは、人間関係にも言えるのではないでしょうか。
嫌いな人とは距離を取りたいと、誰でも思いますよね。

そして、距離をとればとるほど、引き寄せ合う力は弱まり、親しくなる可能性はどんどん低くなります。
もしかしたら私たちは、本能的に万有引力の法則を知っているのかもしれませんね。

エドワード・ホールがプロクセミック（近接心理学）で論じたのは、２人の関係と距離の問題でした。
２人の間が１．２メートル以上あれば、それはビジネスの関係です。
たしかに応接セットに座るとそれくらいになります。

一方、４５センチ以内というとても近い距離にいても気にならないのは、
家族や恋人などの特別親しい関係に限られます。
つまり、２人の間の物理的な距離は、そのまま心理的な距離感を表しているのです。

ところが、たとえ嫌いな相手でも、何かの拍子に４５センチ以内に近づく機会があったりすると、
なぜか苦手意識が薄らぐことがあります。

また、男女の間でも、普段は意識していないのに、何かの拍子に異常接近すると、
それ以降は妙に気になる存在になってしまうなどということもあります。
そういえば、「壁ドン」なんてのも４５センチ以内に近づきますよね。

ですので、苦手意識を払拭したいという人や、お近づきになりたい人がいる場合は、
何か理由をつけて、あえて４５センチ以内に近づいてみて下さい。
きっと新しい展開がありますよ。

しかし、どうしても近づく勇気が湧かないという人もいます。
わかりました。
他の方法もご紹介しましょう。

先ほどの定理３を思い出して下さい。
引力は、２つの物体の質量の積に比例するのでした。
ということは、あなたの体重が２倍になれば、引き合う力も２倍になるということです。