株式会社ファイブスターズ アカデミー
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思いこみというのはよくありますが、今回ばかりはとても驚きました。
テレビで京都大学霊長類研究所の元所長、松沢哲郎の話を聞いていて、目から鱗が落ちました。
ヒトは生物学上、「サル目(霊長目)」に分類されます。
サル目は、さらに10以上の「科」に細かく分けられますが、ヒトは当然「ヒト科」の動物です。
驚いたのはこの後です。
ヒト科は、さらに「属」に分けられるのですが、
その属が4つもあるのです。
ヒト属、チンパンジー属、ゴリラ属、オラウータン属。
これらは総称して「類人猿」と言いますので、ヒトに近い動物であろうということはうすうす気づいていましたが、
まさか「ヒト科」だったとは・・・。
そういえば、動物行動学の本で、「自己」を認識できる動物は類人猿だけだと読んだ記憶があります。
これはどうやって調べたかと言うと、
麻酔などで眠らせた上で本人に気付かれないようにして、顔に絵具を塗ってから鏡の前に立たせるのです。
例えばサルは、鏡の中の自分を「自己」と認識することはできません。
ですので、敵と思って威嚇を始めます。
ところが類人猿は、自分の顔の絵具がついた部分を撫で始めるのです。
これこそ、「鏡像認知」といって、自己を認識できている証拠です。
他には、イルカやゾウも認識できます。
どうやら紡錘細胞というのが関係しているのではないかと言われてきましたが、
最近、カササギやイカでさえも鏡像認知できるという報告が出て、この説も怪しくなりました。
話をもとに戻しましょう。
さらに驚いたのは、人類の進化についてです。
てっきり、チンパンジーが二足歩行を始めたことによって「手」が生まれ、
それがヒトに進化するきっかけになったと思っていました。
これも違います。
チンパンジーの足をよく見ると、人間とは異なり親指が横についています。
まるで「手」そっくりです。
そうです!
チンパンジーは「四手類」と呼ばれ、もともと「手が4本ある」動物なのです。
つまり、こういうことです。
立ち上がるようになって生まれたのは、「手」ではなく「足」の方だったのです。
となると、「手」が生まれたから進化したという説は成り立たないことになります。
では、進化のきっかけは一体何だったのでしょう?
松沢は、彼らの事を完全にヒト扱いします。
数える時も「何頭」ではなく、「何人」と言います。
最初は違和感がありましたが、なにせヒト科なのですから間違いではありません。
そして次に紹介したのは、レオという男性です。
もちろんヒトではなくチンパンジーです。
彼は脊髄の重い病気に罹り、寝たきりとなってしまいます。
研究者や獣医が、ボランティアで24時間のケア体制を敷きました。
その甲斐あって、半年でかなり回復したそうです。
問題は、その間彼が全く絶望しなかったことです。
口に水を含んで、ケアしてくれる人に吹きかけるといういたずらをよくしたそうです。
なぜ、彼は絶望しなかったのでしょうか。
松沢の分析はこうです。
チンパンジーには「今」しかない。
先のこと、つまり「将来」のことは全く考えないから、絶望しないというのです。
そもそも、将来のことを考える動物はヒトだけです。
言い方を変えると、ヒトだけが将来の夢を抱いたり、
あるいは将来に絶望したりすることができるのです。
もしかしたら、ヒトの進化は、足とか手とかが生まれたことではなく、
将来のことを考えるようになったことがきっかけなのではないでしょうか。
つまり、将来の夢の実現に向けて努力したり、あるいは先の不安に備えることが
ヒトとしての進化をもたらすトリガーだったという仮説は、結構魅力的ではありませんか。
しかし、残念なことに、現代はなかなか「将来の夢」が見いだせず、
逆に「先の不安」がヒトを痛めつける時代です。
絶望している人間に向かって「絶望できるのは人間だけだ」と言ったところで、何の慰めにもなりません。
そこで考えました。
不安でどうしようもない時は、取りあえずチンパンジーのように「今」のことだけ考えればいい。
明日のことより、「今」この瞬間にやるべきことに、ベストを尽くせばいい。
なんだか肩の荷が下りたような気がしませんか?
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