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5☆s 講師ブログ

ザ・フェイマス・グラウス

社会人になって数年が経った頃、当時の上司に銀座のバーに連れて行ってもらいました。

随分と歴史のある店でした。
なんでも銀座が焼け野原だった頃からやっていると言うので
3人いるバーテンダーの中でもっとも若いという人と話してみると、なんと60をとうに過ぎていました。

なぜかカウンターの立ち席が大人気で、そこが空くまでのつなぎとして椅子席で飲むという
今思えば少し変わった店でした。

それから結構な時が経ち、管理職になった私は近く結婚するという部下を連れて再び訪れました。
そのとき、彼が注文したのが、この手ごろな値段のウィスキーでした。

彼の奥さんになる人はキャビン・アテンダントでしたが、
ロンドンのフライトの帰りには、お土産に必ずこの酒を買ってくるそうです。

この話に興味を引かれて飲んでみると、それまで飲んでいたその数倍の値段のウィスキーより
はるかにうまいではありませんか。
たしかに、コストパフォーマンスでは1、2を争うと言ってもいいでしょう。

グラウスとは、ハイランド地方の山野に生息する雷鳥のことだそうで、ラベルにも大きく描かれています。
当時、上流階級の間では雷鳥狩りが流行っていたそうで、マーケティング戦略としては大正解だったわけです。

そういえば、『ワイルドターキー』というバーボンも同じ戦略でしたね。
あ、ちなみにバーボンはコーン(とうもろこし)だけから造られていると思われがちですが、違います。

バーボン・ウィスキーの定義によれば、コーンが51%以上であることとなっています。
正確に言うと他にもいくつかの制約がありますが、
実際にはコーン70%くらいであとはライ麦や大麦麦芽だそうです。

コーンが80%以上のものは、コーン・ウィスキーと呼ばれます。
『プラット・バレー』などは、くせがなくとても飲みやすいウィスキーです。

話をもとに戻しましょう。
実は、この『ザ・フェイマス・グラウス』、発売当初は『ザ・グラウス・ブランド』という名前でした。
ところが、人々はその名前では呼ばずに、こう言うのです。
「あの有名な、雷鳥のウィスキーをくれ!」

そこで、思い切って名前を変えてしまったというわけです。
その後、70年代に経営権が売却され、家族経営の会社から国際企業に生まれ変わると
なんと売り上げは10年間で10倍になりました。

私もこのウィスキーのように、いつかは「あの有名な」という形容詞がつくようになりたいと思っています。

思えば、あのバーもそうでした。
惜しまれながらも閉店してしまいましたが、銀座コリドー街の「クール」と言えば
「ああ、あの『クール』ね」
と言われるほど有名でした。

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