ビーター・リンチ
従業員が何万人もいる、大会社に勤めていた頃の話です。
「今日はやけに飛ばすなぁ、人でも轢いたら大変だぞ」
不意に、かつて読んだ本の、あるフレーズが気になり出しました。
何だっけ?
なかなか思い出せません。
記憶を辿っていくうちに、ついに思い出しました。
ピーター・リンチです。
アメリカにフィデリテイという投資信託No.1の証券会社があります。
80年代に、この会社のマゼランファンドが、非常に高いパフォーマンスで一躍有名になりました。
そのファンドを運営していたのが、今や伝説となったピーター・リンチその人です。
すでにこのファンドは解散してしまいましたが、平均22%の利回りだったと言いますから
もし創設された頃に100万円投資していたら14億円以上になっていた計算です。
当時、ピーター・リンチの上司はこんなことを言っています。
「フィデリティにとって最大の恐怖は何か?
それは、ピーター・リンチが夕方家に帰る途中で、バスに轢かれることである」
もしも、と考えました。
もしも、この私がバスに轢かれたら、会社にとってどのくらいの損失になるのかと・・・
どう贔屓目に見ても、会社にとって「恐怖」の事態ではありません。
それどころか、痛くも痒くもないのかもしれない。
なぁんだ、結局はそれっぽっちの存在か。
そう考えると、とても空しい気持ちになったのを覚えています。
しかし、ピーター・リンチだって、会社にとって無くてはならない存在になるまでは、
ずいぶんと努力したのでしょう。
私も、「お前がいないと困る」という存在にならなければ。
失われた20年の間に、多くの会社はリストラに着手せざるを得ない状況に追い込まれました。
その結果、皮肉なことに、優秀な人材から先に流出してしまったケースもあるようです。
とりあえず目先の利益は出るようになりましたが、問題は今後の成長性です。
しかし、リストラが会社の成長を生み出すわけではありません。
成長を生み出すのは人です。
社員です。
どんな大企業でも、結局は人間の集まりなのです。
アメリカの諺にこんなのがあります。
「多くの企業にとって、もっとも重要な資産というのは、夕方家に帰るものだ」