グランツ
グランツというウィスキーは珍しい三角柱のボトルです。
三角柱と聞いて、グレンフィディックを思い浮かべた人はかなりのウィスキー通。
実は、この2つのウィスキーは同じところで作られています。
ウィリアム・グラント&サンズ社といいますから、グラント氏とその息子達の家族経営であることがわかります。
グラント氏が苦労して自分の蒸留所を持ったとき、8人の息子と2人の娘、そしてひとりの石工が協力したそうです。
ところが、用意した資金はすべて蒸留所の建設費に消えてしまいました。
グレンフィディックは御存じの通り12年ものです。
つまり、彼らが精魂込めて作った酒が売れてお金が入ってくるのはなんと12年先。
気の遠くなるような話ではありませんか。
そこで、とりあえず蒸留した原酒をブレンド会社に売って事業としていましたが、
その取引先が倒産したためいよいよ自社でのブレンドに進出せざるを得なくなりました。
それが、グランツです。
セールスの担当は元高校教師の娘婿でした。
初めてのセールスの世界で、まず彼がやったことは片っ端からの飛び込み訪問です。
記録によれば、エジンバラ、グラスゴーからロンドンまで足を伸ばし、
訪ねたバーやレストランはなんと503軒にのぼります。
では、どれくらい売れたのでしょう。
実は売れたのはたったの1ケースでした。
しかし、彼の偉いところはそれからなのです。
彼は、いくら断られても諦めませんでした。
イギリス以外の国にまで足を伸ばし、日本にも売り込みにやってきました。
「継続は力なり」とはまさにこのことです。
教師から転職したひとりの愚直なセールスバーソンが、
断りにくじけることなくコツコツとセールスを続けたおかげで、
グランツは今や、世界的に有名な銘柄のひとつになりました。
時代は目まぐるしく変化しています。
商品のデザインや、マーケティングのやり方も日々革新が求められています。
しかし、時代を超えて人々に深く愛されるものというのは、
往々にして、愚直なまでの地道な取組みから生まれることもあるのです。