裏切り者検知アルゴリズム(1)
認知心理学の中に「演繹的推論」に関する研究があります。
以前やった「3つのドア」のようなクイズだと考えて下さい。
えっ? また論理パズルなの? と、
面倒に思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、これから実に不思議な体験をしていただきます。
同じロジックで構成されている2つの問題の正答率が、なんと20倍近くも違うのです。
まず問題1は、有名な「ウェイソンの選択問題」です。
そして、次に問題2にチャレンジしてみて下さい。
【問題1】
カードの片面には「数字」、もう片面には「アルファベット」が書かれていて、次のような規則があるとします。
『アルファベットが母音であるならば、その裏の数字は偶数である』
今、「E」、「K」、「4」、「7」の4枚のカードが提示されています。
この規則が正しいことを確かめるに、どうしてもめくらなければならないカードはどれでしょう?
カードの片面には「飲み物」、もう片面には「年齢」が書かれていて、次のような規則があるとします。
『飲んでいるのがビールならば、20才以上でなければならない』
今、「ビール」、「コーラ」、「22才」、「16才」の4枚のカードが提示されています。
この規則が正しいことを確かめるに、どうしてもめくらなければならないカードはどれでしょう?
問題1の正解は、「E」と「7」です。
正答率はかなり低いので、できなくてもご安心下さい。
【解答2】
問題2の正解は、「ビール」と「16才」です。
こちらは何となく直感でわかったのではないでしょうか。
でもこの2つの問題は、まったく同じロジックなんですよね。
さて、今回は問題1について、解説しましょう。
「E」の裏が偶数ならば規則は正しいことになりますが、奇数ならば誤っていることになります。
ですので、「E」は何としてもめくって確かめる必要があります。
ここまではいいですね。
では「K」はどうでしょう。
規則を読むと、子音の場合については何も書かれていません。
ということは、子音の裏が奇数でも偶数でもいいことになります。
よって、「K」をめくっても、この規則が正しいかどうかはわかりません。
「4」は、少しややこしいです。
「母音の裏が必ず偶数」という規則は、「偶数の裏が必ず母音」ということとは違います。
上の「K」の場合で、裏が偶数でもいいケースがありましたね。
ですので、「4」の裏が子音だったとしても、規則に反していることにはなりません。
ところが「7」の場合は、もし裏が母音だった場合、
「母音の裏が偶数」と言う規則に反してしまいます。
ですので、裏は必ず子音でなければなりません。
ということで、めくって確かめる必要があるのです。
イギリスの大学生に解かせたところ、正答率はたったの4%だったそうです。
「E」のみという回答が33%、「E」と「4」という回答が46%もありました。
ところが、問題2もまったく同じロジックなのに、正答率はなんと75%に跳ね上がるそうです。
不思議ですね。
実は、このカラクリには、人類の壮大な歴史が刻まれていたのです。
詳しくは次回。