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5☆s 講師ブログ

なぜ賃金は上がらない?

前回、デフレ脱却の方策についてお話すると予告しました。

経済学的に言うと、インフレターゲット政策というのが王道です。

しかし、このブログで解説したように、お金をジャブジャブにしても(マネーサプライを増やしても)、人々の財布のヒモが固くてなかなかお金を遣わない(貨幣速度が下がっている)状況では、効果がありませんでした。

つまり、人々の消費マインドを変えない限り効果は望めません。
しかし、もし中央銀行が「インフレ期待」を生み出すことを宣言したとしても、問題はどうやってその期待を作り出すかです。

かつて、日本が本当に大恐慌寸前だった90年代後半、岩田規久男氏は「日銀が市場の株式や土地を購入すること」を提案しました。
まさに窮余の一策、捨て身の離れ業です。

しかし、現在はそれほどの緊急事態ではありません。
しかも、メディアのインフレ反対大合唱報道の真っ只中で、このようなことを実施するのは世論の支持を得られないでしょう。

そこで、私からの提案です。

まず、大企業は従業員の賃金を上げることです。
ベースアップではなく、臨時ボーナスでもかまいません。

以前、戦後最長の好景気が続いていたとメディア報道されても、私たちにはまったくその実感はないと書きました。
実は、日本の主な大企業は、ここ数年間、史上最高の利益を上げていたのです。
それは、バブルの頃をはるかに凌駕する水準でした。

しかし、その利益を従業員に還元することはありませんでした。
90年代後半の深刻な不況を経験した企業の多くは、「将来何があるかわからない」という理由で、利益の大半を内部留保として溜め込みました。

また、ホリエモンの乗っ取り劇に恐怖を抱いた企業は、労働分配率より資本分配率を優先しました。
要するに、より多くの株式配当を出して、自社の株価を高く保とうとしたのです。
この方法は、防衛策としては正解ですが、現在のように日本の景気そのものが失速し、日経平均株価自体が大幅に値下がりしてしまうとほとんど意味をなさなくなります。

今、この閉塞状況の中で、消費者のマインドを大きく変化させるためには、ここ数年の史上空前の好景気で莫大な利益を溜め込んだ大企業が、率先して従業員に利益を還元することです。

メディアは、どこの企業がどれだけ従業員に還元したのかをこそ、特集を組んで報道すべきです。

そして重要なことは、その臨時ボーナスなりベースアップ分を、従業員が貯蓄に回さないことです。
大半を消費に回し、残りで自社の株を買うべきです。
そうすれば経営陣がもっとも恐れている乗っ取り対策にもなるはずです。

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