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5☆s 講師ブログ

素朴な貨幣数量説

このプログを書き始めて以来、方程式だけは使わないように心がけてきました。

しかし、今回だけはどうしても使わないと話が進みません。
数式が苦手な方は、読み飛ばしていただいても結構です。

ただ、今回の話はインフレターゲット論の基本に関わることですので、ちょっとだけ我慢してくださいね。
そのかわり、できるだけ分かりやすくしますから。

MV=PT

これは素朴な貨幣数量説というもので、インフレターゲット論の根拠になっているものです。

まず左辺からみていきましょう。
Mは、マネーサプライの頭文字で、世の中にどれだけの量のお金が出回っているかを表します。
これが大きい数字だと、ジャブジャブということです。

Vは、貨幣速度とか流通速度というもので、どれだけの速さでお金が回転しているかを表します。
バブルの頃を思い出してみてください。
財布に入れた1万円札は、まるで羽根が生えているかのように、あっという間に消えていきました。
これがすなわち、「(回転)速度が速い」ということです。

つまり、金回りがいい、すなわち景気がいいというのは、2つのケースが考えられます。
まず、お金の量がジャブジャブのケース。

もうひとつは、お金の量はそれほど多くなくとも、バブルの頃のように回転速度が速いケース。
実はバフルの頃は、MもVも両方とも結構数値が高かったのです。

次に右辺を見ていきましょう。
Pは、インフレの主役である物価のことです。

Tは、取引の総数量のことです。

ですので、PとTを掛け合わせたものは、世の中の取引総数量とその価格を掛け合わせたものになります。
これは、すなわち、世の中で行われた商取引の総額になります。

今、インフレターゲット論では、Tはこのモデルの外で決まると考えます。
そして、Vを一定と仮定します。

すると、Mを増やせばPも増えることになります。
つまり、マネーサプライを増やしてジャブジャブのお金を垂れ流せば、やがて物価は上がるはずということです。

実際はそう簡単にはいかないので、”素朴な”という形容詞がついています。
ただ、基本的な考えは以上のとおりです。

かつて日銀の速水総裁は、なぜかこの理論を徹底的に否定していました。
しかし、その後の福井総裁は、就任するや否や大方の予想を覆して、この理論を取り入れて大幅な量的緩和に踏み切りました。
すなわち、ジャブジャブのお金を市場に供給したのです。

おかげで日本経済は、深刻な大恐慌だけは免れましたが、その後好況というには程遠い状態です。
でも、今でもお金のジャブジャブさ加減は、バブルの頃をはるかに上回っているのです。

では、なぜこのメカニズムが働かないのでしょうか。
それは次回お話します。

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