株式会社ファイブスターズ アカデミー

今回の日銀総裁の人事については、ずいぶんと政治的な駆け引きがありました。
その中で、私が問題視していることが２点あります。

まず、政党があまりに関与しすぎたため、日銀の独立性が大きく揺らいだということです。
法律上、日銀は政治から独立した判断ができるよう保障されています。
とは言っても、現実問題はいろいろな軋轢があるのは事実です。

しかし、今回の人事問題はあまりに露骨でした。
もし、今後民主党が政権をとった場合に、日銀が自主的な政策判断が可能なのか、とても心配させられる出来事でした。

次に問題なのは、関わった政治家があまりに経済に無知だったということです。
国会で、候補者の所信に関して議員が質問していましたが、高校で習うような経済の基本的なことについても明らかに理解不足でした。

この映像が世界に配信されたときに、世界中の経済界のビジネスパーソンや学者がどう思うでしょうか？
おそらく、「こんな国には投資できない」と判断するでしょう。

とりわけ、伊藤隆敏氏の副総裁起用を不同意とした事実は重大です。
もともと日銀の政策に批判的だったインフレ・ターゲット論者を、わざわざ副総裁として推薦した自民党の意図についても全くの謎でした。
それはともあれ、日本経済学会の会長も務め、世界的に超有名な経済学者である伊藤氏を、経済に疎い国会議員があまりに幼稚な論理構成で質問していく構図は目を覆うばかりでした。

もし伊藤氏が副総裁に就任していれば、日本の経済政策の歴史は大きく塗り替えられていたことでしょう。
とても残念なことです。
結局当たり障りのない人事に決着しましたが、日銀の独立性に対して大きな影がさしたことの責任はいったい誰がとるのでしょうか。